日本がここまで豊かでなかったころ、世間で欲しいものの代表は「3C」といって、クーラー、カラーテレビ、カー(クルマ)と言われていました。今、社会が豊かになり、かつては購入対象としてみられていたもの、たとえばクルマなども、今ではリースやシェアするほうがカッコいいという風潮になってきています。
つまり、社会が成熟するにつれて価値観もどんどん変わってくるものなのです。こうして需要が多様化するなかでは、供給側の企業でも多様化していかなければ、ミスマッチが生じていいアイデアは出てきません。
企業は多様化する社会に対応せよ
昨今、日本の産業の4分の3はサービス業です。そのサービス業のユーザーの6~7割が女性です。社会が多様化し、多くの女性がサービスの受け手となっている現在、「自分が日本の経済を支えているんだ」と思っている50歳や60歳のおじさんたちに、はたして女性の気持ちがわかるでしょうか?
僕にも娘が2人いますが、妻を含めて、家族におみやげを買って帰っても、だいたい褒められたためしがありません。
つまり、商品を供給する側の企業に女性がいないと、需要と供給のミスマッチは解消しないのです。現代社会は多様化しています。供給サイドも多様化しなければ、経済は伸びていきません。そう考えると、企業のダイバーシティは必然なのです。
僕が10年前に立ち上げたライフネット生命は、若手の社員や女性社員が多く、ダイバーシティが進んでいる会社だと思っています。2017年6月に僕が取締役を退任した時に、後任として選ばれたのは30代の2人です。日本の銀行や保険業界で、30代の取締役なんて見たことないですよね。
ライフネット生命には定年がありませんし、年齢を気にすることもありません。そういった年齢フリーの土壌が「30代の取締役」を可能にしているのだと思っています。
さらに、2018年1月から僕が学長を務めている立命館アジア太平洋大学(APU、大分県別府市)では、学生の51.4%、教員の48.5%が外国籍です。
また、外国籍の教員に海外の大学で学位を取得した教員を含めると、約85%にのぼります。職員にも外国人が多くいます。僕が選出された学長の候補者選考委員会も、副学長のほか、教員や事務職員、卒業生の計10人で構成され、そのうち4人が外国人でした。このようなダイバーシティが進んだ組織は、日本では他に類を見ません。APUは、日本で最も国際化やダイバーシティが進んでいる大学ではないでしょうか。