「過労死」(karoshi)と同様に、英語にもなっている「社畜」(shachiku)。そんな悲しい「社畜」社員の生態を、名画などのパロディーにして描いた動画「社畜あるある 社畜ミュージアム」が、インターネットで話題になっている。
しかも制作したのは、中小企業を支援する経済産業省所管の独立行政法人・中小企業基盤整備機構(中小機構)。「おカタイ役所」が「社畜」をブラックユーモアにした動画をつくり、2018年1月24日にYouTubeに公開した。
架空の美術館を舞台に悲しい「社畜」たちの姿が
中小機構は2004年に中小企業関連の3つの特殊法人を統合し設立された。中小企業の新事業展開や販路開拓などの経営アドバイスや、情報・経営支援ツールなどを提供している。
動画「社畜ミュージアム」に足を踏み入れると、入口に驚愕の彫刻が。いつまでも終わらない仕事に疲れ果てた男性社員が、椅子に寄りかかり、滑り台のような形で石化して固まっている。
作品のタイトルは「お手上げスライダー(滑り台)」。館内に流れるBGMがモーツアルトの「怒りの日」だから、怖い。
続いて、恐怖の表情でスマートフォンに向かって絶叫する若い男性社員の絵画。深夜なのに取引先からの電話が鳴りやまないのだ。
こちらのタイトルは「戦慄のミッドナイトコール」。その横には、仕事中の若い男性社員の肩に手をかけ、優しく励ましている風の上司の銅像が。いい雰囲気に見えるが、とんでもない。これは「進捗モンスター」。ヒマな上司がアドバイスなど一切せずに、「進捗どう?」と部下を毎日責め立てているようすを描いた。部下はもう爆発寸前だ。
大きな絵画はドラクロアの「民衆を導く女神」をパロディーにした。女神が突き出す手は1本指だ。後ろの民衆は2本指、3本指を突き出す。作品タイトルは「寝てない自慢大会」。「私は1時間しか寝てないわ~」「俺なんて2時間」と少ない睡眠時間を競い合う。
さらに、女性の新入社員が取引先に頭を下げて謝っている銅像には、「はじめまして、ごめんなさい。」というタイトルが付いている。新入社員は前任者の業務を引き継いだものの、前任者がいい加減だったため、訳もわからず謝りに回らされているらしい。
なかでも圧巻の絵画が「居残り部長」だ。ダ・ヴィンチの名作「最後の晩餐」をもじった。中央に最後の食事をとるイエスならぬ仕事を片付けられない部長が陣取る。周囲をウンザリした表情の部下たちが取り囲む構図だ。
そして、ミュージアムの出口には頭を抱えて絶望する社員の銅像が。「月曜、襲来。」のタイトルで、魔の1週間がまた始まる......
「働く人を、もっと笑顔に」「日本の中小企業を支えたい」のクレジットとともに「中小機構」のエンドロールが流れる。