犯罪に使われた口座の「名義人」は被害者!
ところが、この「銀行口座の凍結」が思わぬ事態を引き起こした。
「通帳やキャッシュカードを紛失・盗難されて、預金口座を犯罪に悪用された結果、口座名義人の指名が口座凍結リストに掲載され、そのため、別口座の利用もできなくなり、生活に支障をきたす事例が発生している」との苦情が多数、金融庁などに寄せられたのだ。
つまり、犯罪被害者なのに、犯罪に使われた口座の名義人ということで、当該口座以外の口座を凍結されてしまったというのだ。
これに対して、金融庁は口座凍結の手続き、運用、口座凍結リストの運用などについて全国銀行協会(全銀協)などに検討を要請した。
じつは、2017年6月に全銀協が凍結リストの運用に係る事務取扱要領を改正。会員銀行の判断に柔軟性を持たせたのだが、凍結リストの具体的な運用基準を策定していない銀行では、現場で対応に苦慮するケースや、銀行によって対応に大きなバラツキが出てしまった。
そこで、金融庁は事務取扱要領の見直しを実効性のあるものにするためには、名義人が凍結リストと合致した場合に、現場がどのような点を確認すればよいのか、業界として具体的な基準・事例を示すことが必要だと全銀協に申し入れた。
金融庁では、たとえば口座利用の目的が給与振込や公共料金の引き落としなどの生活利用である場合には、新規口座開設の謝絶や口座凍結を行わないことを明確にするなどの工夫が必要だと指摘した。
全銀協では口座凍結のあり方について、具体的な事例を含め、考え方の統一を図っているものの、ことは犯罪に絡むだけに銀行ごとの自由裁量で判断するのはかなり難しいもよう。確かに犯罪を封じ込めることも重要だが、銀行口座は重要な生活インフラの一部であり、被害者への十分な配慮が必要だ。(鷲尾香一)