その38 敬老入浴事業 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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敬老入浴事業は税金、でも費用対効果は?

   敬老入浴事業のために、どの自治体もそれなりの税金を使っているはずだ。だけど、「費用対効果」という点から見ると、そんなに胸を張れる事業なのだろうか。

   でも、月に2~3回ではなくて毎日、高齢者を割引料金で入浴させてくれるのなら、文句も言えないな。そう思っていたら、そんなところもあった。

   たとえば、東京都中央区だ。65歳以上の区民は年中いつでも100円で銭湯を利用できる。これなら、「健康増進」「ふれあい交流」と言われても仕方がない。そう思いかけたが、中央区には肝心の銭湯が今9つしかない。そのせいだろう、お隣の千代田区、台東区の計5つの銭湯も「協力浴場」ということになっている。

   僕が子供のころ、銭湯に行くときは、たらいにタオルとせっけんを入れ、下駄履きでカラコロ、といった感じだった。

   だけど今、まさに東京都の中心である中央区あたりで「敬老入浴事業」のお世話になろうと思っても、住んでいる場所によっては、そう簡単にはいかない。ある程度、服装を整え、地下鉄かバスでということにもなりかねない。勢い、入浴料金100円が年中OKでも、銭湯には足が遠のくのではないか。

   表立って反対はしにくい「敬老入浴事業」だけど、実際に「高齢者福祉」にどれだけ役立っているのか。よく考えてみると、はなはだ心もとないのである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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