突然ですが、2018年1月1日から立命館アジア太平洋大学(APU、大分県別府市)の学長になりました。
2017年11月24日のAPUの発表に、びっくりされた方もいらっしゃったかもしれませんが、大学から内定の知らせを受けて、一番びっくりしたのは僕自身でした。
「とても光栄に思うと同時に責任の重さを痛感しています」
ここに至るまでの経緯ですが、立命館アジア太平洋大学(APU)では、是永駿前学長の任期満了(2017年12月31日)に伴い、初めて次期学長を公募で選ぶことを決め、17年5月に、副学長・理事をトップとした計10人からなる学長候補者選考委員会を発足させました。
そして7月から、学長候補者を自薦・他薦によらず国内外から公募し、1か月半で100人を超える候補者が集まりました。その中から、選考委員会の協議を経て、今回の決定に至ったのです。
他薦されたということは少し前に知らされていましたが、なにしろ100人を超える人の中からの選出です。「まさか自分が選ばれることはないだろう......」と思っていたので、本当に驚きました。
APUは、外国籍の学生や教員の割合が約半数と非常に高く、ダイバーシティに富んだ大学です。学長候補者選考委員会のメンバーも、副学長のほか、教員(5人)や事務職員(2人)、卒業生(2人)で構成され、10人のうち4人が外国人でした。そうした幅広いバックグラウンドの方たちが、僕を選んでくれたということを、とても光栄に思うと同時に責任の重さを痛感しています。
僕は、マスター(修士号)もドクター(博士号)も持っていませんし、大学のマネジメントもしたこともありません。私に学長が務まるだろうか? という思いは少なからずありましたが、選ばれた以上は全力投球するという気持ちでいっぱいです。
ライフネット生命を立ち上げて10年。社長、会長職を経て、2017年6月には若い人たちに経営を任せ、会長職を退きました。
それ以降、講演や教育・研修などの活動に力を注いできましたが、この1月からは、住まいも別府に移して、APUの運営に専念することにしています。
APUはダイバーシティあふれる大学
「立命館アジア太平洋大学(APU)」という名前を知っている人は、どのくらいいるでしょうか?
じつは、僕も学長の候補者に推薦されるまで、この大学のことを詳しくは知りませんでした。しかし、その後APUについて知るにつれて、日本の大学の中でもグローカル(グローバル+ローカル)の最先端を行き、地域密着型でありながら、国際性とダイバーシティに富んだ、すばらしい大学だということがわかりました。
APUの学生の51.4%(約3000人)は世界の約90の国々から来ており、外国籍の教員比率も48.5%と、とても高い割合となっています。大学の授業は日本語と英語で、日本の大学ではめずらしい春入学だけでなく秋入学も実施しています。
さらに、その国際性をよく表しているのが、2017年10月にイギリスのグローバル高等教育評価機関のクアクアレリ・シモンズ社から発表された、地域別世界大学ランキングです。
このランキングで、評価指標である「国外からの教員比率」と「留学生比率」の2項目で、APUは100点満点中、100点満点を獲得しました。両項目ともに100点を獲得しているのは、アジアでは8大学のみ、日本ではAPUだけでした。
また、2016年8月にAPUの国際経営学部と経営管理研究科が、AACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business=マネジメント教育を推進する世界で最も権威あるビジネススクール認証機関のひとつ)インターナショナルという、マネジメント教育の国際的な認証評価機関から、世界で最もレベルの高い教育を提供する教育機関として認証を取得しています。
これは、 日本では3大学目で英語での認証取得は日本初になります。世界のビジネスユニットでも、わずか5%しか認証を受けていないという高いレベルなのです。
地域と連携、より良い教育と研究を実現する
こうしたAPUのマネジメントに今後関わる機会を与えられたことに、身の引き締まる思いをしています。
まずはAPUの教授や職員、学生の皆さんが、どのような大学にしていこうとしているのか? 大学のマネジメントに何を望んでいるのか? をよく聞くことからはじめようと考えています。
APUはすでに2030年ビジョンを策定しています。「APUで学んだ人が世界に散らばり、そこで自分の持ち場を確保して、APUで学んだことを活かしながら自ら行動することによって世界を変える」という素晴らしく壮大なビジョンです。
2020年には、APUは開学20周年を迎えますが、2030年ビジョンを具体的な行動計画に落とし込み、2020年、2030年に向かって体制改革を行っていくことがボクに課せられた責務です。
大分県や別府市など地域の方々とも連携をとりながら、より良い教育と研究が実現できるよう、しっかりとした経営を行いたいと思います。僕の任期中(3年)に、「一般公募で学長を選んでよかった」、「世界におけるAPUの地位が上がった」と言っていただけるように、がんばりたいと思います。(出口治明)