子供たちが目的のためにまとまり前進 マネジメントの極意を会得!?(大関暁夫)

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   ちょっとおもしろい話を耳にしたので、ご紹介させていただきます。

   仕事関係の知り合いで女性デザイナーのHさん。企業筋からの依頼案件が増えるに従って、もっと仕事の幅を広げたいと思うようになり、デザインだけでなくマネジメントの知識を持って仕事の領域を広げることができたら、という思いから、仕事の傍らMBA取得を目指し夜間休日の経営大学院に通い始めました。

  • パーティーで楽しくすごす!
    パーティーで楽しくすごす!
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目的はパーティーで「楽しくすごす」こと

   そんなHさんは、主婦であり一児の母でもあります。お子さんは、小学校2年生の女の子。Hさんは、自分が働いていたり学校に通っていたりするからといって、娘の世話を疎かにしたくない、むしろ娘と一緒にいる時間が他の母親よりも少ない分、より一生懸命に母親としてできることをしてあげたい、そんなことを常々口にしていました。

   その思いをカタチにするひとつとして、定期的に娘さんのお友達を自宅に招いてパーティーを企画してあげよう、という彼女なりのイベントがあります。1年半前から初めて、参加するお友達は最初のお食事会が6人。二回目は夏休み納涼会で13人。三回目がハローウインパーティーで17人。そして今回、なんと26人が参加してのニューイヤーパーティー。クラス30人の大半が参加するという、一大イベントにまでなってしまったのだそうです。

   15時スタートで、屋外で遊んで、室内で遊んで、夕飯を食べて、映画を見て20時終了という、盛りだくさんの5時間コース。食事の準備や会場設営やらはママ友に応援を頼めばなんとかなるものの、幹事役のHさんには作業分量上だけでなく、大人数の開催に向けて運営責任者としての悩みごとがいくつかありました。

   まずは、子供たちのケガや事故、次に子供同士のケンカ、そしてHさん宅は都心のマンションであり、ご近所への迷惑対策などでした。

   なんと言っても相手は平均年齢8歳の子供たちです。一方的にルールを決めて、果たしてうまくいくものなのか、当日が近づくにつれ心配で夜も眠れぬ日々を送ったと言います。そんな折も折、ある日彼女のアタマにスッとひらめいたことがありました。

「これってもしかして、今私が習っている組織行動、リーダーシップ、ファシリテーション等々の実践の場なのではないか、って思ったのです。相手は8歳の子供たち。細かい決まりごとを決めても絶対無理。都度、問題が起きる可能性は大きいし、下手に強制しようものなら反発する子が出てきたりして収集がつかなくなるに違いないと思って、最初にみんなで一緒に考えてみることにしたのです。そこで、まず真っ先に目的として掲げたのが、26人全員が気持ちよく楽しく過ごすことだったのです」

基本ルールを考え、共有する

   彼女がファシリテートしながら、26人の8歳児たちが目的を共有しながら、そのために当日起こりうる場面場面でどうしたらいいのかを、自分たちで考え言葉にして意識させることにしたのです。

   すなわち、他人の家で遊ぶ時に気をつけるべき基本マナーって何か、周囲のお宅に迷惑かけないように心がけることは何か、お友達に嫌な思いをさせないために守ることは何か、等々。そんな基本ルールをみんなで考えてみたのです。

「具体的には、窓を開けて騒いでいるとどうなるの? と聞いて、近所に迷惑! と子供が答えてそれをしっかり意識をさせる。そのうえで、さぁ窓を開けるよ、と言えばみんなが一斉におしゃべりをやめる、といった具合です。その調子で次々、廊下を歩くときは、外に出て道路を歩くときは...... みたいに投げかけて、自分たちで考えさせればちゃんと必要な行動につながっていくのです。まぁ、子供は汚れなく心がシンプルだからもありますが、マネジメントスキルってこういう使い方で、実践で役立つのだと感動しました」

   Hさんが、キラキラと目を輝かせて続けます。

「室内でのお正月遊びやビンゴゲーム、外に出ての鬼ごっこや大縄跳び、夕食後はプロジェクターで映画鑑賞。自ら考えて経験して学んだことは、すぐに次の応用に役立つのですよ。だから、外出時はきれいに二列に並んで歩いて、他の歩行者の邪魔にならないようにできたし、帰ってくれば夕飯の支度や後片付けに自発的にお手伝いをしてくれました。誰も泣くことなく、ケンカもなく、皆が皆、楽しい時間を過ごそうとしてくれました。本当に楽しいあっという間の5時間。私は大変疲れたけど、本当に嬉しかったです」

   ビジネススクールで学んで知るマネジメントスキルを、26人もの子供たちをまとめ前向きに歩ませるヒントに転用したHさんの発想と行動は、本当に素晴らしいと思いました。

   当日手伝ってくれたママ友たちからも、絶賛の嵐だったと言います。

   「皆しっかりHさんに従って、Hさんを慕って、Hさんの周りに子供たちが集まっているのを見て、自分の親としての反省も促されました」と、ママ友の一人はつくづく話していたそうです。

   当日の写真を見せてもらって、楽しそうに遊ぶ子供たちを相手に負けないぐらいの笑顔で一生懸命に長縄跳びを回すHさんの姿に、感動すら覚えました。目的を共有して、相手目線を基本として、自分も自分の立場で一生懸命動くこと。そうすれば必ず、皆が動く、皆がまとまる、皆が前に進む。相手が誰であれ、マネジメントとはそういうものだと改めて教えられた次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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