基本ルールを考え、共有する
彼女がファシリテートしながら、26人の8歳児たちが目的を共有しながら、そのために当日起こりうる場面場面でどうしたらいいのかを、自分たちで考え言葉にして意識させることにしたのです。
すなわち、他人の家で遊ぶ時に気をつけるべき基本マナーって何か、周囲のお宅に迷惑かけないように心がけることは何か、お友達に嫌な思いをさせないために守ることは何か、等々。そんな基本ルールをみんなで考えてみたのです。
「具体的には、窓を開けて騒いでいるとどうなるの? と聞いて、近所に迷惑! と子供が答えてそれをしっかり意識をさせる。そのうえで、さぁ窓を開けるよ、と言えばみんなが一斉におしゃべりをやめる、といった具合です。その調子で次々、廊下を歩くときは、外に出て道路を歩くときは...... みたいに投げかけて、自分たちで考えさせればちゃんと必要な行動につながっていくのです。まぁ、子供は汚れなく心がシンプルだからもありますが、マネジメントスキルってこういう使い方で、実践で役立つのだと感動しました」
Hさんが、キラキラと目を輝かせて続けます。
「室内でのお正月遊びやビンゴゲーム、外に出ての鬼ごっこや大縄跳び、夕食後はプロジェクターで映画鑑賞。自ら考えて経験して学んだことは、すぐに次の応用に役立つのですよ。だから、外出時はきれいに二列に並んで歩いて、他の歩行者の邪魔にならないようにできたし、帰ってくれば夕飯の支度や後片付けに自発的にお手伝いをしてくれました。誰も泣くことなく、ケンカもなく、皆が皆、楽しい時間を過ごそうとしてくれました。本当に楽しいあっという間の5時間。私は大変疲れたけど、本当に嬉しかったです」
ビジネススクールで学んで知るマネジメントスキルを、26人もの子供たちをまとめ前向きに歩ませるヒントに転用したHさんの発想と行動は、本当に素晴らしいと思いました。
当日手伝ってくれたママ友たちからも、絶賛の嵐だったと言います。
「皆しっかりHさんに従って、Hさんを慕って、Hさんの周りに子供たちが集まっているのを見て、自分の親としての反省も促されました」と、ママ友の一人はつくづく話していたそうです。
当日の写真を見せてもらって、楽しそうに遊ぶ子供たちを相手に負けないぐらいの笑顔で一生懸命に長縄跳びを回すHさんの姿に、感動すら覚えました。目的を共有して、相手目線を基本として、自分も自分の立場で一生懸命動くこと。そうすれば必ず、皆が動く、皆がまとまる、皆が前に進む。相手が誰であれ、マネジメントとはそういうものだと改めて教えられた次第です。(大関暁夫)