2017年は世界的に株価が上昇した1年だった。日経平均株価はこの1年に19%上昇して2万2764円94銭(大納会=12月29日)になった。
米国株を代表する指数であるS&P500も19%上昇して2674ドルになった。米NASDAQ(アップルやアルファベットなどを含む、新興市場)は28%も上昇した。
「儲からない人などいるの?」と言えるような1年だった
米国株が大きく上がった理由はいくつかある。まず、何だかんだ言っても米国株は長年にわたり投資家を儲けさせてきたこと。S&P500は過去10年間に平均年8.5%増えていった。多くの投資家は米国株のパフォーマンスに満足している。
それから米国人は(米国人に限らないが)自国の株式市場に集中的に投資する傾向にあり、海外の市場に目を向けることが少ないこと。そして今のタイミングで重要な要素は、米国で法人減税が実行されそうであることだ。
加えて、欧州や新興国市場も上昇した。そのため全世界の主な株式を最も広範に含む株価指数であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) は昨年1年で22.7%も上昇した。
世界的な好景気に加えて、中央銀行の金融緩和策による低金利や投資家のリスク選好、日米の法人減税への期待などがこれを支えた。
さらに社債の価格も着実に上がっていったし、REIT(不動産投資信託)も強かった。大半の投資家がいい目を見た1年だったと言えるだろう。
「これで儲けられない人などいるのか?」と言えるような年だった。
では2018年はどうなるであろうか? ――。
多くの市場関係者は強気の姿勢を続けている。大手投資銀行各社の予測を見ると、JPモルガンやクレディスイスなどではS&P500が、2018年中に3000ドルになる(本年初頭の2674ドルから12.2%の上昇)という予想をしている。
「今が買い時、まだまだ上がります」というのはセールスマンの常套句であるが、米国で法人減税が発表されて以降、各社の予測数値は上がる傾向にある。
しかし、もちろん弱気の人もいる。これだけ上がったのだからそろそろ下がってもおかしくないのでは、という漠然の恐怖が一つ。また、金利の上昇が見込まれることも背景にある。
今年には日欧米英の世界の四大中央銀行の金融緩和政策が転換期を迎え、全体として金融引き締めに転じそうだ。
2018年、世界経済は好調を維持できる
現在の株価はレシオ(株価収益率=PER。一株当たりの税引き利益に対する株価の倍率)からみても割高に見える。S&P500のPERは2009年2月に11.1だったのが、2017年末に26.8まで上がった。
つまり、米国の大手企業の株は平均して26.8年分の純利益に当たる価格で売買されているということだ。これは歴史的にみて、かなりの高い水準である。
私は、2018年も米国も欧州も日本も株価は全体として去年ほどではないにいても、まだまだ上がっていくのではないかと思っている。
やはり米国を中心とする世界経済が好調を維持していきそうなことと、米国で減税が実施されるところが大きい。株価は企業の将来利益の予想であるとすれば、減税は株価を直接的に押し上げるはずだからだ。また経済に大きな不安要因がないこともある。ただし、それは一様ではないと考える。
長期的にみるとバリュー株の利回りがずっと強い!
2017年の相場の大きな特徴はハイテクを中心とするいわゆる成長株の伸びが特に大きかったこと。その中でも「FAANG」と呼ばれるフェイスブック(時価総額61兆円)、アマゾン(67兆円)、アップル(100兆円)、ネットフリックス(10兆円)、アルファベット(87兆円)の5社(いずれも米Nasdaq上場)の株価は圧倒的に高いだけでなく、2017年に約5割も値上がりした。
一方で、「BAT」と呼ばれる中国のバイドゥ(9兆円)、アリババ(55兆円)、テンセント(7兆円)の3社も、米国トップ企業に肉薄するレベルにまで上がった。ちなみに、日本企業トップのトヨタ自動車(24兆円)の時価総額と比べても、どれだけスゴイかわかるだろう。
これらは素晴らしい会社ばかりだが、ここまで上がっていくと値下がりのリスクも考えないといけない。時価総額が大きいので、下がりはじめると相場全体に与える影響も大きい。
そこで私が提唱したいのは、ハイテクやヘルスケアなどの成長株から、バリュー株(割安とされる)へと重点を移していくことだ。
たとえば、2017年にパフォーマンスがよくなかったのが、エネルギー業界であった。原油価格が今一つだったから当然ともいえる。しかし、長期的にみるとバリュー株の利回りがずっと強い。有名投資家のウォーレン・バフェットはバリュー株中心の投資スタイルを貫き、それで長年にわたり成功を収めてきた。
リスク分散のために、欧州と日本の株の保有を増やせという意見もあるが、私なら、その手はとらない。将来性やダイナミズムで米国にかなうマーケットはないからだ。
世界経済の中心にある米国企業の強さは、2018年も続くだろう。(小田切尚登)