銀行窓口での保険商品の販売で、「外貨建て生命保険」のトラブルが増えている。
保険の銀行窓販の全面解禁から、2017年12月22日で10年が経った。国民生活センターは、これまでに寄せられた保険の銀行窓販に関する相談事例を紹介するとともに、ここ数年、新たに増えてきた外貨建て保険の相談事例も明らかにした。
「為替リスク」説明不十分か?
そもそも「外貨建て生命保険」は、保険金や年金、解約返戻金などを外貨で受け取る保険をいう。支払った保険料も外貨で運用する。「保険としての保障を得ながら、外貨にも分散投資できる」というのが売り文句だ。
そんな外貨建て保険をめぐって、国民生活センターにこんな相談が寄せられていた。
「銀行窓口で500万円を定期預金にするつもりだったが、保険商品を勧誘され、内容もよくわからないまま出された書面に署名、捺印。帰宅後にそれが保険契約だったことを知った。投資の経験はなく、保険を契約するつもりはないのでクーリング・オフの手続きを踏んだ。ところが、解約すると米ドルで返金され、すぐに円に換金したが、為替差損と手数料分の損失を差し引かれて500万円全額は戻ってこなかった。これでは納得できない」(大阪府の70代男性)
国民生活センターは、「こうした『為替リスク』を十分に理解しないまま契約してしまったり、そもそも説明が不十分だったりしたことがトラブルにつながっているようです」とみている。
為替相場は変動する。そのため、この相談主のように外貨建て保険の契約をクーリング・オフした時点の相場水準によっては為替差損が発生するケースもあり得るわけだ。
ちなみに、保険期間が1年以下の場合には、クーリング・オフが適用されない場合がある。
その一方で、銀行はここ数年、保険商品の窓口販売に力を入れている。保険会社から委託を受けて、保険商品を「代理販売」することで、高い販売手数料が得られるからだ。
日本銀行のマイナス金利政策が続くなか、銀行の資金運用は難航、融資も貸出金利ザヤが確保できなくなっていて収益状況は厳しい。いまや保険窓販は、銀行の重要な収益源というわけだ。なかでも、外貨建て保険商品は販売手数料が高めに設定されているとされる。
しかも、目立つのは高齢者への販売をめぐるトラブル。高齢者の親族などから、「株取引もしたことがないのに外貨建て保険を勧められた」「銀行は、為替リスクがあることを説明したというが、本人が理解しているとは思えないまま契約させた」などといった苦情は後を絶たない。
保険の銀行窓販の相談件数、60歳以上が約8割
国民生活センターによると、外貨建て保険を含む、保険の銀行窓販への相談は17年度の相談件数は11月末までに229件と、前年同期と比べて98件減った。ただ、保険商品の銀行窓販が全面解禁されて以降の推移をみると、「一概に減少傾向にあるとはいえません」としている。毎年一定程度の相談が寄せられるが、そのほとんどが「生命保険」への相談という。
なかでも、高齢者のトラブルは多く008年度以降は60歳以上が7割以上を占める傾向が続いており、13年度は全体の81.2%(421件)を占めた。17年は78.8%(11月末まで)を占めていた。また男女比でみると、66.8%が女性だった。
そうした中で、国民生活センターでは「外貨建て保険」の具体的な相談件数については公表していないものの、「近年、新たに外貨建て保険の相談が見られるようになりました」としている。
一方、金融庁の「金融サービス利用者相談室」への受付状況によると、生命保険への相談件数(17年4月1日~9月30日)は、全体で1036件だった。預金や融資、株式などへの投資に関する相談が前年同期と比べて減ったのに対して、増えたのは生命保険だけだった。