振り袖レンタル・販売の「はれのひ」(横浜市)をめぐる「雲隠れ」騒動が、いまだ混迷を極めている。成人の日(2018年1月8日)に突如営業を取りやめ、契約していた新成人らはパニックに。なかには、成人式に出席できなかった人もいた。
今後、被害者たちはどんな対応をとるべきなのか。また、「はれのひ」はどんな罪に問われる可能性があるのか――。弁護士に聞いた。
計画倒産の可能性も
「はれのひ」をめぐっては、国内4店舗のうち3店舗で突然連絡が取れなくなり、一部の契約者は振り袖を着ることができなくなった。
同社の公式サイトによると、料金はレンタルプランで9万8000円から、購入プランで19万8000円から。仮に高価な振袖を購入し、写真撮影や着付けも依頼しているとなると、相当な金額にのぼるだろう。
信用調査会社の東京商工リサーチは1月9日、はれのひの全店舗が同日までに閉鎖され、事実上事業を停止したと公表。2017年から取引債務や従業員給与の支払いの遅延などが起きていたとしている。財務状況をみると、16年9月期は3億6000万円の赤字で、負債総額は6億1000万円にのぼっていた。
複数の報道によれば、社長ら役員は音信不通状態で、「計画倒産」の可能性も指摘されている。
詐欺罪に問える?損害賠償請求は?
20歳の門出を台無しにした今回の騒動。法的にはどんな問題があるのか――。グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士は1月11日、J‐CAST会社ウォッチ編集部の取材に、
「詐欺罪に問える可能性は非常に微妙です」
と話す。
というのも、
「最初から商品を提供するつもりがなく、お金を持ち逃げしようとする意図があるようなケースであれば疑いの余地なく詐欺罪が成立しますが、会社の経営が苦しい状況で自転車操業を繰り返していた場合、結果的に会社が倒産したとしても、それは基本的に詐欺罪に問うことはできません」
現時点ではどちらのケースも考えられるというわけだ。
「今後、会社の売り上げや負債の状況、例年の成人の日から卒業式のシーズンの売り上げと再建の可能性の検討、現金・預金はどのような動きをたどったのかなど、さまざまな事情を考慮して詐欺罪が問われるか否かを決定していくことになると思われます」
被害者の最善策は?
損害賠償請求についても、「微妙」のようだ。
「計画倒産のような悪質な場合に限り、経営者個人に賠償責任を追及できるのですが、会社が破産手続をする多くの場合、経営者個人も破産手続をすることが通常でしょうから、経営者個人には損害を賠償するほどの資産が残っていないかもしれません」
それでは、被害者はどんな手を打つべきなのか――。刈谷弁護士は、振袖代金の支払い方法で対応策は変わってくるという。
刈谷弁護士は、「クレジットカードで決済をした場合は、クレジットカード会社に対して支払停止を申し出ることが最善策です。カードの保有者は、加盟店が契約を履行しない場合などに、カード会社に対して支払いを拒むことができます。今回の被害者は、カード会社に連絡をして支払停止の手続きを取ることがいいでしょう。これはカード代金の支払いを正当に拒絶する権利のことなのですが、もしかするとカード会社が自主的に返金の対応をとってくれるかもしれません」と指摘。
ただ、すでに現金で支払いを済ませている場合は、「法的には契約を解除した上で代金の返還請求をすることになりますが、あまり現実的とは言えないでしょう」と話している。