【2018年を読む】信金・信組の生きる道「よろず相談」なんでもやる! 城南信用金庫・顧問 吉原毅氏に聞く

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   日本銀行のマイナス金利政策の影響で、信用金庫や信用組合といった地域の中小・零細企業を支える協同組織金融機関が苦しんでいる。地方を中心に地域経済が停滞。加えて、収益力の低下で規模拡大を狙った合併が進んでいる。

   1990年代後半の金融危機時から、救済を含む、規模拡大の合併を頑として拒んできた城南信用金庫(東京都品川区)顧問の吉原毅氏に、2018年の協同組織金融機関の「進路」を聞いた。

  • 吉原毅氏は「2018年のキーワードは原点回帰」と語る
    吉原毅氏は「2018年のキーワードは原点回帰」と語る
  • 「地域のため、『よろず相談』なんでもやる」と語る吉原毅氏
    「地域のため、『よろず相談』なんでもやる」と語る吉原毅氏
  • 吉原毅氏は「2018年のキーワードは原点回帰」と語る
  • 「地域のため、『よろず相談』なんでもやる」と語る吉原毅氏

2018年のキーワードは「原点回帰」

   ―― 日本銀行のマイナス金利政策が効いています。貸出金利ザヤも薄くなり、信用金庫や信用組合の経営は厳しさを増しています。処方箋はありますか。

吉原毅氏「マイナス金利の影響で貸出金利が低下して収益を圧迫している構図は、メガバンクのそれと同じです。預金金利はマイナスにできませんし、一方で貸出金利はマーケットに連動して抑えられるのですから、貸出金利ザヤが薄くなるのは当然です。その一方で、資金運用が難しくなっていることもあります。
   そうした時代に、どうすべきか。それは原点に立ち返ることです。困った人を助ける。夢を応援するとか。信用金庫や信用組合といった協同組織金融機関とは、そういう社会的使命をもって誕生したのですから。2018年のキーワードは『原点回帰』です」

   ―― 具体的に教えてください。

吉原氏「わたしども城南信用金庫の原点は、明治35年に遡ります。幕府の重鎮だった上総一ノ宮藩の最後の藩主、加納久宜子爵が東京・大田区の自宅に都内最古の信用組合を設立し、そこで公益事業に取り組んだのです。農作物を売りたい、部品の調達先をさがしている、そういう『よろず相談』をはじめた。庶民の生活や夢の実現を支援することで、人々のつながりを広げ、そのつながりが後になって利益を生む。そうやって社会に貢献してきたんです。
   いま改めて、協同組織金融機関はそれをやらなければならないと思っています。東京には、すばらしい技術力や性能のよい商品をもっている人や企業、おもしろいアイデアをもっているけれど資金が足りなくて事業が拡大できない、事業化できない人、企業がたくさんあります。そういった人を支援していきます。前向きに、地道に、昔ながらの日本的経営を実践していきます」

   ―― 1990年代後半、信用金庫や信用組合も経営破たんや合併で大きく数を減らしました。それ以降、金融庁の旗振りもあって地域金融機関は「リレーションシップバンキング」を掲げてきましたが、それをこれまで通り続けていくという理解でいいでしょうか。

吉原氏「続けるというよりも、それを深化させるということです」

   ―― それでは、地方銀行と変わらないのではありませんか。収益力の低下で、信用金庫、信用組合も合併や公的資金の資本注入などが続いており、経営基盤が揺れています。規模も拡大。城南信用金庫(3兆5787億円、2017年3月末時点)をはじめ、全国に預金量2兆円を超す信用金庫は12もあります。ますます同質化が進んでいるように思えますが。

吉原氏「協同組織金融機関の中にも、生き残りのために規模の拡大を志向するところはありますし、そういった考え方を否定するものではありません。しかし、同じ地域金融機関でも、銀行と協同組織金融機関との違いは『株式』にあります。銀行は株式会社ですから、日本社会のことを顧みない外国の株主などを見て経営をします。利益追求を果たしていかなければ、株主から見放されてしまい、存続できなくなってしまいます。その結果、顧客不在の間違った経営に手を染めることもある。たとえば原発もそうです。協同組織金融機関はそうではありません。お客様の顔を見て仕事ができますし、寄り添うことができます。もちろん、利益を上げなければなりませんが、株式会社のように必要以上に利益を追うようなことはありません。
そのため、協同組織金融機関に求められていることは、地域の発展のために、『一にも二にも公共事業に尽くせ』という加納子爵の言葉なのです」
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