株式投資は「ゼロサム」ゲームではない!
―― 「株価は上がるもの」とは、どういうことなのでしょうか?
広木氏「一世を風靡したトマ・ピケティの『21世紀の資本論』の主要メッセージは、経済の成長率より、株式などの資本のリターンのほうが常に高いということです。簡単に言えば、われわれサラリーマンが一生懸命に働いて得る給料の伸びよりも、働かずに投資で得られるリターン(まさに「不労所得」)のほうが常に高いということです。だから「持てる者」と「持たざる者」、すなわち資本家と労働者の格差は開く一方だということをピケティは指摘したわけです。
そういうと、まるで株式投資は悪いことのように思うかもしれません。不公平だとか、格差を助長するという感情論からくる批判があとを絶ちません。しかし、株価が上がって損する人はいません。株価が上昇している今、もし損している投資家がいるとしたら、それは『空売り』を仕掛けていた人くらいですよ」
「株価が上がって損する人はいません」と語る、広木隆氏
―― 株式や為替などへの投資は、よく「ゼロサム」ゲームといいます。相場の世界では、みんなが勝つようなことはないのではありませんか。
広木氏「いや為替は、たとえば円安になると輸出企業は得ですが、輸入企業は得しませんよね。為替や金利はプラス・マイナスの両面がありますからゼロサムになりますが、株式は持っている人が得するんです。持っていない人も、損はしません。そのため、株式を持つ者と持たざる者に貧富の差が生じるということはありますが、本来は株価の上昇に不満な人はいないはずなんです。株式は企業への投資です。基本的に、企業が利益などの付加価値を生み出し企業価値を向上させている以上、株価が下がる理由はありません」