「滅私奉公と引き換えの安定」はいらない!?
3. 専門性の高い人材とゼネラリストの格差も拡大
サラリーマンの負担が大幅に増える影響もあって、正社員の中には自ら終身雇用の肩書を捨てる人間も増えるだろう。じつは数年前から大企業のエンジニアでありながら、退職して技術系の派遣社員として働く人材がぼちぼち出現している。
たとえば、正社員で年収700万円貰っていた人材なら、派遣社員なら年収1000万円超も十分視野に入るためだ。
差額の300万円は「自身が定年まで雇用してもらうための保険料」「仕事のできない同僚を雇い続けるためのコスト」などで、筆者は「終身雇用コスト」と呼んでいるものだ。要するに、その終身雇用コストを負担するのがバカらしく思う人たちがさらに増えることになるだろう。
同じトレンドは新卒採用にも表れている。2017年は「初任給40万円の中国企業、ファーウェイ」が話題となったが、同様に新人に600万円以上の初任給を支給する日系の新興企業は複数あり、すでに東京大学や東京工業大学といった理工系エリート学生の人気就職先となっている。
こうした新しいキャリアパスを選択できるのは、労働市場で引き合いのある高い専門性を持つ人材だけだ。そうした専門性を持つスペシャリストと、従来どおり会社に縛り付けられるゼネラリストの間でも、格差は拡大するだろう。
まとめると、全体として正社員と非正規雇用労働者の格差は拡大するものの、正社員の間でも会社にモノが言える人材と言えない人材の間で格差は開き、終身雇用色は徐々に薄まっていくのではないか。
とりわけ「『総合職』という身分に入って滅私奉公と引き換えに安定を得る」という文系サラリーマン的な生き方は急速に魅力を失いつつあるように見える。
厚生労働省の調査によると、一般職採用者に占める男子の割合は、2009年の8.1%から2014年の17.9%と着実に増加傾向にあるのがわかる(2014年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況)。ともすれば、草食化という文脈で語られがちなトレンドではあるが、筆者には柔軟性のある若い世代だからこそ、上記のような地殻変動に対して敏感に反応しているように思えてならない。
【2018年予測】
・5年ルールで正規と非正規の格差が拡大する
・サラリーマンの負担が大幅に増える
・一方、専門性の高い人材とゼネラリストの格差も拡大
これは正規と非正規はあまり関係なく、むしろ「デキる」人材は終身雇用の外に飛び出す。
一定のスキルを身につけた後は、雇用形態にこだわらず労働市場を積極的に活用する生き方が台頭するのではないか。(城繁幸)