【2018年を読む】世界経済は完全に復活! 欧米も新興国も、なお成長へ(小田切尚登)

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   2017年はトランプ米大統領という「千両役者」が登場して、我々はそれに引きずり回された1年だった。

   日本人にとっては、北朝鮮との戦争の脅威が最大の課題であるし、欧州では英国がEU離脱への歩みをはじめた。また、中国では習近平がますます権力基盤を固め、海外への影響力を強めるなど、世界各地で大きな政治的動きが色々あった年だった。

  • 2018年の世界経済は、さらなる成長が続く
    2018年の世界経済は、さらなる成長が続く
  • 2018年の世界経済は、さらなる成長が続く

トランプ政権暴走も、経済は別物だった

   しかし、政治の混乱とは裏腹に、世界経済は全般的に非常に好調で、おおむね安定していた。つまり政治と経済は別物、というのが2017年の最大の教訓だった。

   日米欧の先進国経済は好調だったし、新興国経済もおおむね良かった。2007年の金融危機から十年が経過して、世界経済は完全に復活したと言ってよい。

   2018年についても、北朝鮮との戦争や世界同時多発テロのようなシナリオにでもならない限り、経済は順調に推移していく可能性が高いだろう。

   米国経済は絶好調であり、オバマ政権時代からの好調をずっと維持している。トランプ大統領の公約は「年4%成長」だが、持続可能な成長率は2%前半程度とされる中で、このところ3%台の成長率を遂げている。

   失業率はオバマ政権の初期には10%を超えていたが、4.1%まで下がった。しかし、賃金水準はほとんど上昇せず、インフレにもなっていない。

   消費も投資もどちらも強い。特に消費者マインドは2004年以来の高さにある。株価と住宅価格が高く、失業率が下がっているので、中流以上の層はホクホクだ。

   米国の株式市場はハイテク株を中心に上がってきている。米国人は平均的に投資の3割から5割程度を株式投資に回しているため、これが直接彼らの資産の増加となる。消費は旺盛で、カネを使う分、貯蓄は減っているが、デフレの心配は少なく、問題視されることはない。

   米国の、2018年の大きなテーマは、連邦法人税の35%から21%への引き下げだ。

   これが景気をさらに押し上げるとみられるが、これだけ好景気の時にさらに減税をするのが良いことかどうか、インフレや財政赤字の拡大といったマイナス面も考えないといけない。

   新しい顔ぶれとなる米連邦準備理事会(FRB、中央銀行)は、減税による景気過熱が起きれば、引き締めのために金利をかなり上げてくる可能性もある。

注意深く、でも基本的には楽観的

    欧州経済も、米国ほどではないが良かった。政治的には英国の欧州連合(EU)離脱以外にも、移民問題やスペインでのカタルーニャ州の独立運動などの問題が山積しているが、それが経済に影響していない。

   2017年の経済成長は2.4%(国際通貨基金=IMF)と近年最高で、2018年も2%を超える数字が出そうだ。

   新興国経済もおおむね良好。IMFによると、世界の4分の3の国で成長が加速したという。2017年に国の借金がデフォルト(債務不履行)になったのは、ベネズエラとモザンビークのたった2か国だけだった。

   中国経済も堅調で、2018年の成長率予測は6.5%と、2017年並みあるいはそれ以上になりそう。ハイテクやインフラなど中国経済には、まだまだ伸びしろがある。

   一方で、この流れに乗れなかったのが、産油国と最貧国のいくつかの国。原油価格は一定程度回復して60ドルに乗せたがまだまだ安く、産油国は苦しい。今後も、代替エネルギーの伸長などもあり、そうそう原油価格は上がらないとみられる。

   このところアフリカなどの多くの新興国が、中国の投資に依存するようになってきているので、新興国の動向は中国の出方次第という状況が増えてきている。

   2018年もトランプ米大統領がいろいろと問題を起こすであろうが、世界経済はそれなりにうまく行く可能性は高い。ただし、長期間にわたり好調が維持されてきたので、ある程度の息切れはするかもしれない。たとえば、失業率の低下により人手不足となり、それが成長を阻害する、といったことなどが考えられる。

   しかし、それを逆手にとってオートメーション化の促進に結びつける、といった風に展開するとうまく回っていくかもしれない。

   「注意深くないといけないが基本は楽観的」というのが、2018年の世界経済についての私のスタンスだ。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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