その36 人をつまずかせる「キャリーバッグ」「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   東京のJR山手線・御徒町駅の構内。歳末の人込みの中を、僕はやや急ぎ足で歩いていた。すると、足の先が何かに当たり、僕は前向きにつんのめって倒れた。左の膝を強く打ち、痛くて起き上がれない。

   倒れたまま首を回すと、「キャリーバッグ」が目に入った。ああ、これに引っ掛かったんだ。

   さらに、目をバッグの上のほうにやると、インド人だろうか、ネパール人だろうか、浅黒い肌色の男性が身振り手振りで僕に謝っている。

  • ご丁寧と言うか、斜めに倒したキャリーバッグまでが「カップル」である。(東京・池袋で)
    ご丁寧と言うか、斜めに倒したキャリーバッグまでが「カップル」である。(東京・池袋で)
  • ご丁寧と言うか、斜めに倒したキャリーバッグまでが「カップル」である。(東京・池袋で)

多くの人がゴロゴロと引きずって......

   その場はそれで済んだし、幸い骨折はしていなかった。老人ではあるけれど、僕もそれほどやわではない。

   キャリーバッグが日本に登場して40年余り。当初は2輪の輸入品のみで、斜めに倒して引くだけだったが、今は4輪が主流になっている。

   その4輪だと、バッグを体のわきに立てて引っ張っていけば、それほどの危険はない。ところが、4輪なのに2輪のように斜めに倒して引いていくと、本人には後方の状況が分からない。僕のような目に遭う人が出てくる。

   御徒町駅でキャリーバッグに倒されて以来、僕は人々がどのようにしてバッグを引っ張っているかを観察するようになった。この記事につけるために、斜めに倒して歩いている人の写真も撮らなければならない。

   すると、あらためて分かったのだけど、被写体を探すのに苦労はしない。まさに、どこにでもいる。そして、僕の見た限りでは、若い女性に多い。自分の後ろには全く注意を払わずに、さっそうと歩いている。

   この状況だと、僕もそのうちにまたキャリーバッグにつまずいて転倒ということになりかねない。そして、次回は骨折、入院、しかも年齢が年齢だけに完治せず、車いすの生活...... というイヤな予感もする。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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