その「値引き」に妥当性はあるか 価格交渉の極意はコレだ!(大関暁夫)

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誤った価格交渉は経営者を、自社を貶めることに

   この話に、S社長はゆっくりうなずくとそれ以上の細かい質問はせず、あとは実務担当に

   「君たちから聞いておくことがあれば質問しなさい」と振りました。

   担当者との事務的なやり取りを、ひと通り終えたIさんは「それでは最後に......」と、やや緊張した面持ちで見積書を社長に手渡しました。社長はそれにざっと目を通すと、黙ってそこに「OK」と書き込み署名をしてIさんに手渡しました。Iさんは、満面の笑みで「ありがとうございます!よろしくお願いいたします」と御礼を返し、一気にその場の緊張感がほぐれ、ミーティングを終えました。

   Iさんは帰りの道々、晴れ晴れとした顔でこんな感想を話していました。

「S社長は素晴らしい経営者ですね。大関さんがおっしゃっていた通り、ご自身が考える価格正当性や値引きを求めるか否かの妥当性を、的確な質問ひとつでご判断いただけた。S社長のように正当な価値判断をいただける経営者には、精一杯がんばらせていただこうと思うものです。逆に、自分の仕事を正しく理解してもらえず、正当性を欠く値引きをさせられたりすると、気持ちが今ひとつ乗らなかったりするものですけどね」

   われわれが常日頃、安易に口にしがちな値引きとは、じつはものすごく難しいものであり、特に経営者の値引きは担当者のそれとは異なり、値引きを求めることの正当性があるか否かをしっかりと判断してから行動に移さないと、かえって経営者自ら、さらには自社をも貶めることにもなりかねない。そんな経営者自身の価格交渉の難しさを実感させられるお話でした。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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