人工知能(AI)の仕事への活用がさまざまな分野に広がってきた。ファミリーレストランではロボットが接客してくれたり、銀行のコールセンターでは問い合わせや相談に適切に回答してくれたり、医療分野では過去の診断データから患者の治療方針を提示したりと、徐々に具現化されており、それに伴い業務が効率化される。
勢い、人手がいらない業務が増え、他の仕事に回される人も出てくる。そんなAIに、「職を奪われる」と危惧する向きは少なくない。そうしたなか、「AIに仕事を奪われる!?」――。そう考えている人は、年収によって差があるようなのだ。
6割が「自分の仕事はAIに奪われない」と予想
グローバル人材の転職を支援する人材紹介会社のロバート・ウォルターズ・ジャパンが、英語力と専門スキルを活かして国内の第一線で活躍する293人の会社員に、「自分の仕事がAIに奪われる時が来ると思うか?」と聞いたところ、61%が「いいえ」と答えた。
外資系企業やグローバル化を進める国内大手企業で働くバイリンガル人材を対象に調査。293人が回答を寄せた。2017年11月28日に発表した。
これを年収別に比べると、「高プロ」とも呼ばれる年収1000万~1500万円の会社員では「いいえ」が73%に上った一方で、若手層・一般職人材など年収450万円未満の会社員では「はい」の割合が54%と過半数に達した。
同社は、「専門スキルや経験値が豊富な中堅層や高プロ人材は、AI・熟練した専門人材それぞれの得意・不得意への理解も深いことから漠然とした不安感は蔓延していないと考えられる」とみている。
一方、「AIに自分の仕事が奪われる時が来ると思う」と答えた回答者(全体の39%)が取り組みたい対策は、「ハードスキルを学びなおす」が10%、「足りない資質・ソフトスキルを磨く」は27%で、「その両方に取り組む」は55%だった。「何もしない」も2%あった。
「磨きたい資質・ソフトスキル」では、トップが「課題発見・解決能力」(33.7%)、次いで「創造力」(28.9%)、「コミュニケーションスキル・交渉力」(26.5%)と続いた。
また、「学びなおしたいスキル」は1位が「経営」の32.1%。2位は「情報・データ分析」(26.9%)、3位「マーケティング」(17.9%)だった。
「AIに仕事を奪われる」脅威を感じている会社員も、AIが不得意とする部分、人間の能力が高い価値を供給できる部分を自ら見つけてスキルアップしようという姿勢がうかがえる。
働く主婦は5割がAIに好意的
こうした調査結果に、ツイッターやインターネットの掲示板などには、
「ワロタ 英語なんか一番簡単なスキルだろ」
「海外の安い労働者でも代替可能な職業は真っ先にAIに置き換えられる」
「AIがそれだけ優秀なら起業したほうがいいだろって考えないのかな」
「えっ! AIって賢いんだろ。路頭脳労働よりも肉体労働のほうが残るんじゃねえの。低収入でよかったわw」
といった声が寄せられる。
一方、「AIの発達の影響」については主婦に特化した調査機関「しゅふJOB総研」が、働く主婦層に調査(2017年6月22日~7月10日、有効回答者数787人)している。
AIの発達が「あなたの仕事環境にどのような影響を与えると思いますか」との問いに、51.5%の働く主婦が「仕事が効率化され、仕事がしやすくなる」と、好意的に答えた。
その半面、「仕事を奪われて、就職先が減る」との回答が43.3%と、心配する声も半数近くあり、少なからず「就職先が減る」と、脅威を感じているようす。
また、「仕事が生まれて、就職先が増える」(19.8%)や「人間がAIの指示を受けて仕事をすることになる」(17.5%)、「仕事のやり方が変わり、仕事がやりづらくなる」(12.6%)などと、誰もが何かしらの「変化」が起きると覚悟している。
「たいした変化は起きない」(6.5%)と、楽観視しているのは少数派だった。