弁護士や大学教授、ジャーナリスト、労働運動活動家らで構成する「ブラック企業大賞企画委員会」は、従業員に人権侵害の労働を強いる「ブラック企業大賞2017」を、2017年12月23日に発表。ホームページに企業・団体名と詳細な理由を公開した。
それによると、「大賞」に選ばれたのは、「アリさんマークの引越社」を展開している引越社・引越社関東・引越社関西のグループ3社。また、「特別賞」に大成建設・三信建設工業、「業界賞」に新潟市民病院、「ブラック研修賞」にゼリア新薬工業。そして、インターネットの投票で決める「ウェブ投票賞」には日本放送協会(NHK)が圧倒的な大差で選ばれた。
労働組合に加入した「罪状ペーパー」を全社員に配布
ブラック企業大賞企画委員会は、「受賞」理由について、ホームページ上で次のように説明している。
(1) 引越社グループ
労働組合に加入した男性営業社員をシュレッダー係に配転したあげく懲戒解雇をした。解雇の理由を「罪状」と記載し、男性の顔写真を入れた「罪状ペーパー」をグループの店舗に掲示。さらに社内報にも掲載し全従業員に送った。
2017年8月、東京都労働委員会はこれらの行為は、男性が労働組合に加入したことへの報復であり、不当労働行為と認定した。引越社グループは、2年前の「ブラック企業大賞」でも「ウェブ投票賞」と「アリ得ないで賞」をダブル受賞している。男性の解雇撤回後も約2年にわたり、終日シュレッダー業務を強いるなどの人権侵害行為を続けている。
(2) 大成建設・三信建設工業
2017年3月、「新国立競技場」の建設工事現場で働く男性(当時23歳)が自殺した件で、新宿労働基準監督署は労災認定した。
新国立競技場の建設工事は大成建設が元請で、一次下請けの三信建設工業に男性は雇用されていたが、男性が自殺する前の1か月の残業は約190時間もあった。この事件を機に、東京労働局が「新国立競技場」の建設工事に関わる約760社を調査した結果、37社で違法な時間外労働が確認された。東京オリンピックの施設を無理な工程で急がせたことが事件の背景にある。オリンピックの美名の下に若い命が失われた事実を忘れてはならない。
(3) 新潟市民病院
2016年1月、当時37歳だった研修医を過労自殺した。自殺する前の残業時間は月平均で過労死ラインの2倍に相当する187時間、最大で251時間に及び、これは2017年のノミネート企業中最多だ。
悲劇が公立病院で起きた点も問題だ。全国医師ユニオンが2017年11月に公表した勤務医労働実態調査によると、全国の勤務医のうち過労死ラインである月80時間を超える時間外労働を行っている研修医は8.5%~18.9%にも上り、医師の過労死が多数報告されている。人の命を救う医療現場で働く人の命が日常的に脅かされているなど、あってはならない。