転職するorしないに関わらず、人は自分の「市場価値」を知りたいと考えるものです。市場価値とは? これまでの仕事内容、経歴・資格、能力などから、現在の人材市場での年収相場はいくらかを示したものです。
ちなみに、社内評価と市場価値は必ずしも一致しません。社内の社内間の相対的な比較による昇給や昇進が行うための「ものさし」なのが社内評価。最近は市場価値を参考にする会社も出てきていますが、日常の仕事で気になるのは、やはり社内評価なのです。
「社内評価=市場価値」ではない
なぜ、社内評価が気になるのでしょう。それは、職場の同僚との比較で参考になるからです。
一方、市場価値は社外の人との比較です。仕事に忙殺される日々が続くと、気にならない存在かもしれません。なので、自分の市場価値について冷静に、かつ的確に知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
ところが転職を考えると、どうしても「市場価値」が知りたくなります。自分の転職後の給与がいくらぐらいになるか? の判断基準だからです。
そこで、さまざまな手段を講じて市場価値を把握しようと試みます。そして、社内評価が高いから市場価値も高い...... と勘違いして、転職活動でショックを受ける人にたくさん遭遇することがあります。この相関性が低いことは、踏まえておいてください。
ちなみに、転職を検討する人の8割以上が自分の市場価値を、なにがしかの手段で知りたいと回答しています(求人情報のパーソナルキャリア調べ)。
最近はいくつかの質問に回答すれば、市場価値を教えてくれる診断サイトがたくさん登場しました。こうしたサイトで診断する人もいますが、よりリアルな結果を知ろうと転職サイトに登録を試みる人が増えています。
本気で転職する決断の前の状態で「自分の市場価値を知ってみたい」との、やや興味本位な動機で登録するのです。確かに、仮に同年齢で同じ業界、同じ職種であっても、仕事の実績と関わり方によって、市場価値は大きく変わります。
その違いを普段の仕事から知るのは簡単ではありません。そこで転職サイトで行っている適職診断や年収診断に加えて、転職希望者としてエントリーすることで、各企業から届くスカウトメールを待ち、届いた企業名などから市場価値を判断するのです。
たとえば、自分の会社より規模が大きな会社、あるいは年収が相対的に高い外資系からのスカウトがあれば、市場価値が現在の年収より高いと判断できるというわけです。
以前であれば、転職は自らが企業の直接応募するスタイルが主流でしたので、興味本位での活動など許されませんでした。ところが、最近はエントリーして「待つ」ことができますから、興味本位のような軽い動機でも転職サイトが「使える」というわけです。
SNSでキャリア明示 海外では当たり前!
そもそも冷やかしのような存在ですから、転職サイトを運営する側からすれば、迷惑にも思えます。しかし一方で、スカウトメールをみて気持ちが高まり、転職を決断する人もたくさんいるのです。
転職サイトを運営する立場であれば、「悩ましいが市場価値を確認するための利用が増えるのはマイナスとは限らない」と感じているのではないでしょうか。また、こうした転職サイトだけでなく、ソーシャルメディアを通じて市場価値を確認する人も増えています。
あえて自分のキャリアを明示することで、ヘッドハンターのスカウトを待つ人。そういう人は海外では当たり前ですが、日本でも徐々に増えつつあります。
ヘッドハンティングとは、転職希望のあるorなしに関わらず、在職者に声をかけ=スカウトして、自社に転職してもらうこと。企業が優秀な人材を確保するために専門会社(ヘッドハンター)に依頼するケースが増えているのです。
その際に、ソーシャルメディアに登録された人のキャリアなどの情報が重要な手がかりになります。以前(2017年11月19日付「人材『囲い込み』時代 企業がSNSを遠ざけるワケを言おう!」)の記事でソーシャルメディアなどへの「顔出し」を反対する会社が増えてきたと書きましたが、まさにヘッドハントをさせないための抑止としての判断でしょう。
ただ、自分の市場価値を確かめたいと考えるのであれば、あえて活用する人がいるのは事実です。(会社の方針に楯突く必要はありませんが)市場価値を確認する方法としてのソーシャルメディアの存在は抑えておいてもいいのではないでしょうか。(高城幸司)