妻が働くことに理解がある男性にも地域差があることが、ニッセイ基礎研究所・生活研究部の天野馨南子(かなこ)研究員の調査でわかった。全国47都道府県を細かく比較したリポートだ。
意外にも都会に「妻は専業主婦が理想」と望む保守派が多く、東北などの農業県に「共働きOK」の革新派が多いという結果になった。
天野さんは、若い女性たちに「思い込みやイメージで、ほかの地域の男性に期待しすぎないで」と呼びかけている。
理解度のベスト1位は岩手、ワースト1位はあの福岡
【図1】自分の家庭の理想は「夫が外で働き、妻が家を守る」ことだ:男女比率(多い順)
(資料)ニッセイ基礎研究所 天野馨南子「夫は仕事、妻は家庭」が理想の男性比率 47都道府県価値観ランキング(1)利用データ:内閣府「地域における女性の活躍に関する意識調査」2015年
この調査は、「『夫は仕事、妻は家庭』が理想の男性比率 47都道府県価値観ランキング(1)」で、2017年12月11日の発表。それによると、内閣府が2015年に全国の2万3500万人を対象に行なった「地域における女性の活躍に関する意識調査」を元に、天野さんがデータを集計・分析した。
内閣府の調査では、男性に「自分の家庭の理想は『夫が外で働き、妻が家を守る』ことだ」と思うかどうかなどの質問を5段階で聞いている。「そう思う」「ややそう思う」と答えた男性の比率を都道府県別に計算した。
全国平均は44.4%で、それを上回る21の府県と、下回る都県を2つの表で示した=図1、図2参照。データからわかるのは、上位10エリアのうち9エリアが西日本に集中していることだ。
1位は福岡県の51.9%、2位が山口県の50.4%で、東日本で入ったのは、10位の宮城県だけ(48.1%)。天野さんは、リポートの中で、「西日本に伝統的性別役割意識の強い男性が多いようだ」と指摘している。
一方、図2は、専業主婦を望む割合が低い順に並べかえた。上位ほど、妻が働くことに理解がある男性が多いわけだ。
これを見ると、上位10エリアは東日本・西日本まんべんなく散らばっている。農業が中心の県が多く、1位の岩手県35.9%をはじめ、秋田県38.8%(4位)、山形県41.5%(10位)と東北から3県がベスト10入りした。天野さんは、「特に東北エリアは『女性に働いて欲しい』、もしくは『専業主婦でいて欲しくはない』男性が多いようだ」と分析している。
大都市圏の愛知、大阪、神奈川、兵庫、京都が保守的
それより、天野さんが注目したのは、大都会のある都府県に「専業主婦を望む」男性比率が高いことだ。
3大都市と言われる東京、大阪、名古屋のある東京都、大阪府、愛知県をみると、愛知県は5位に、大阪府は13位にランクインしている。そのほか、若い女性にオシャレで先進的なイメージのある大都市のある神奈川県(横浜市、川崎市)、兵庫県(神戸市)、京都府(京都市)、福岡県(福岡市)、広島県(広島市)、千葉県(千葉市)など、大都市のあるエリアの大半が全国平均よりも「専業主婦を望む」男性比率が高いグループ(図1)に入っているのだ。
こうしたことから天野さんは「都会の男性のほうが、女性が結婚後も働くことに理解がありそうと思っているのであれば、と考え直した方がいいのかもしれない」と述べている。