最高裁大法廷は2017年12月6日、テレビがあれば、たとえNHKの番組を見ていなくても、受信契約を義務づける放送法の規定は、契約の自由を保障した憲法に違反しないとの判断を示した。
受信料制度を「合憲」だとする最高裁の初めての判断である。
「買った人はカネを払う」「買わなければ払わない」
その理由を分かりやすく言えば、「公共放送であるNHKは特定の団体などから影響を受けてはならない。つまり、表現の自由が大切であり、そのためには財政基盤がしっかりしている必要がある。ついては、テレビがあれば、見る見ないに関係なく、受信料を払ってNHKを支えるべきである」というものだ。
僕も長く新聞社にいたから「表現の自由」が大切であることは十二分に承知している。また、NHKとは違って新聞社は私企業ではあるけれども、「公共」の存在であると思って仕事をしてきた。
じゃあ、番組を見ても見なくても、NHKをみんなで支えるのなら、同じような存在である新聞を、読んでも読まなくても、購読料を払ってみんなで支えてくれてもいいのじゃないか。
最高裁の判断を読むと、そうも思いたくなってくる。
もちろん、以上は暴論ではあるが、「NHKを見なくても、カネだけは払え」というのも納得できない。見た人はカネを払う、見ない人は払わない。買った人は払う。買わない人は払わない。それが世の「常識」というものだと僕は思う。
その常識に沿った解決法のひとつは、NHKをスクランブル放送にして、受信料を払った人は見られる、払わない人は見られない、というようにすることではないか。WOWOWがやっているのと同じやり方である。
NHKは「払え、払え」と攻めてくるだけ
今、NHKの受信料支払率は79%とのこと。支払っていない、つまり受信料の契約をしていないのは21%である。この中には「見なくても払え」というNHKの高圧的な態度に反発して払わない人も少なくはないはずだ。
もし、NHKがスクランブル放送になり、そして放送内容が公共放送にふさわしいものだったとする。すると、スクランブルの解除を申し出て、NHKに受信料を払い始める人も出てくるだろう。ひいては、受信料の支払率も今の79%からもっと上がっていくのではないだろうか。
さらに、WOWOWがやっているように、見る月は契約する、見ない月は契約を解除できる、といったふうになれば、まことに好都合である。
そうすれば、「紅白歌合戦」のある12月は契約率が100%に近くなるかもしれない。一方で、番組が不評なら、契約を解除する人が出てくるだろう。NHKと視聴者の間に緊張感が生まれ、放送内容の向上にも役立ちそうだ。
ところが、NHKはここまでに書いたようなことは、全くやろうとはしない。ただ、放送法の規定を盾に「払え、払え」と攻めてくる。その融通のなさが「払え」「払わない」の不毛なやりとりが延々と続く原因にもなっているのではないか。(岩城元)