先月(2017年11月)、加計学園の獣医学部問題を審議した衆院文部科学委員会で、日本維新の会の足立康史衆院議員が他の政党の議員3人の名前を挙げて「犯罪者だと思っています」と述べた。
まさに「中傷」である。そして、各党から抗議されると、足立議員は「陳謝し撤回したい」とすぐに応じた。足立議員が「犯罪者発言」を悪かったと思うなら、「陳謝」するのは当然である。でも、「撤回」をそう簡単に許してはならない。
多すぎる! 政治家の不適切発言
「綸言(りんげん)汗の如し」という言葉がある。「綸言」は「君主の言葉」を指し、君主がいったん口にしたことは、体から出た汗と同じで、元には戻せない。つまり、取り消したりはできない、という意味だ。中国の格言である。
足立議員を君主並みに扱うつもりはないが、一応は国政を預かる国会議員である。発言の撤回を許し、国会の議事録からも削除してしまえば、発言はなかったことになってしまう。そんな安易なことでいいのだろうか。
足立議員の発言のすぐあと、今度は自民党の山本幸三衆院議員が、アフリカ各国との交流に熱心な同僚議員について「何であんな黒いのがすきなのか」と発言した。差別的な発言だと批判を浴びると、「表現が誤解を招くということであれば」と、すぐに撤回してしまった。
山本議員は地方創生相だった今年(2017年)4月にも、観光振興に文化財を活用することについて「一番のガンは文化学芸員だ。観光マインドが全くない。この連中を一掃しないといけない」と述べたが、批判を浴びると、すぐに撤回して、おわびしている。
「撤回すれば、それでよし」なのか?
麻生太郎副総理兼財務相も発言撤回については「常連」である。2013年には憲法改正論に関して「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかなかった。あの手口に学んだらどうか」と発言し、批判されると、翌日には「不適切」と撤回した。
それなのに、この夏には「何百万人を殺したヒトラーはいくら動機が正しくても駄目だ」と、ナチスのユダヤ人虐殺を擁護したとも受け取られかねない発言をし、翌日にはまた「不適切」と撤回している。
政治家が暴言、失言、不適切発言をやらかしても、撤回すればそれでよし――。そんな風潮が世間にはあるのではないだろうか。それに甘えて、政治家は平気で暴言を繰り返す。僕にはそのように思えてならない。
もっとも、ここで書いたような発言は、取り立てて世の中に悪影響を及ぼすとも思えない。発言した政治家を「ばかだなあ」と、笑い飛ばしておいてもいい。
しかし、不用意な発言が、たとえば外国との戦争を引き起こすことだってありうるだろう。その意味で、私たちは政治家には常に「綸言汗の如し」という覚悟を持つよう求めたいのである。
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