市場規模はわずか1兆140億ドル これからが本番だ!
―― 「インパクト投資」とは、どのようなものですか。
ピーター・ファンコーニ氏「インパクト投資は、経済的な利益を追求すると同時に、貧困や環境などの社会的な課題に対して解決を図るという投資です。
似たような概念に、ESG投資(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資)やマイクロファイナンスなどがありますが、ESG投資の中に、直接的に投資する分野としてインパクト投資が含まれ、さらにその中に個人向け融資としてマイクロファイナンスが含まれます。
現在、世界の総投資額が212兆ドルとされる中で、インパクト投資への投資は1兆140億ドルと、全体のわずか0.04%にとどまっています。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)に照らすと、年間2.5兆ドルの投資がさらに必要とされており、ニーズとの投資ギャップはいまだ大きい状況にあります」
―― 現在、運用しているファンドは?
ピーター・ファンコーニ氏「当社は、現在16のグローバルファンドを持っています。その中には、オバマファンドやG7天候ファンド、COP23パリ協定をフォローするファンドなどがあります。
また、2001年に設定した当社の旗艦ファンドである『ブルーオーチャード・マイクロファイナンス・ファンド』は約17年間運用し、現在12億ドルの資産残高となり、平均の年間リターンは4.3%となっています。2016年9月には、日本の投資家向けに『日ASEAN女性起業支援基金』を設定しました。これは主に東南アジアの貧しい女性を融資対象にしたファンドです」
―― 日本の投資家向けファンドの設定から1年経ちました。融資や運用の状況はいかがでしょう。
ピーター・ファンコーニ氏「『日ASEAN女性起業支援基金』は、この1年で32万人に計1億2000万ドルの融資を行い、その90%が女性です。世界銀行の考え方に、1人に融資すると、その家族5人に影響を与えるというデータがありますので、1年間で150万人に経済的安心を与えたと考えるとすばらしい成果だと考えています。期待していたよりも早いペースで達成できており、このファンドの主要な機関投資家である住友生命や国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などにもよい報告をすることができました。
日本政府も女性の起業支援や、商業的なファンドについて積極的ですので、こうした方向性に合ったファンドだと言えます。また、このファンドは、日本では初のマイクロファイナンス・ファンドですが、他国からもこの取り組みが関心を持たれており、ロールモデルにしたいといったような要望もあがってきています」