総括せよ! 会社にはびこる「責任逃れ」体質(江上剛)

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   小さな印刷会社に勤務しています。所属する部署で進めてきた仕事がうまくいきませんでした。リーダーは責任を感じていると思っていたのですが、反省会の席で、「みんなで決めたのだからみんなに責任がある」ということを言いはじめたのです。たしかにみんなで決めたことでしたし、リーダーにすべての責任を押し付けるつもりはありません。みんな持ち場持ち場で責任感を持って取り組んできたと思います。とはいえ、そのように責任の所在を曖昧にしたままで仕事に区切りをつけていいのでしょうか。なにか、学生のサークル活動のノリで、すごくイヤでした。私のこの感覚はおかしいのですか?

   ちっともおかしくはありません。みんなに責任があるという部長(?)のほうがおかしい。自分が責任を取らされるのが嫌なのでしょうね。

  • 責任者、出てこい!!
    責任者、出てこい!!
  • 責任者、出てこい!!

日本企業の失敗の原因はココにある!

   こんな部長は、掃いて捨てるほどいますよ。いちいち腹を立てるのも面倒くさくなるくらい。

   一方で、「責任は自分にある」と表向きは部下想いのいい恰好をしながら、裏では「馬鹿な部下ばかりだ」と不満を漏らす部長もいるから、どっちもどっち。

   しかし部員が「責任を明確にするべき」という認識で一致したら、やはり部長にきっちりと言い込んで責任の所在を明らかにする、いわゆる仕事の総括をしたらいいと思いますよ。

   日本企業の失敗は総括しないことだから。

   上司が総括しないのは、失敗の原因を探し出し、検証して、それが責任追及になることを恐れるからだね。

   だから総括のやり方、失敗の原因を追及するのも、個人攻撃にならないようにしながら、組織の問題を改善する方向に持っていけたらいいと思う。

   なかなか、難しいけどね。

成功すれば「俺がやった」 失敗すると......

   余談だけど、昔、「総括」っていう言葉が流行ったことがあった。

   連合赤軍という過激派が、「総括」という言葉で仲間を追い詰めて、リンチし、殺害し、榛名山の山中に埋めたという陰惨な事件があった時だね。

   こんなことを思い出すなんて私も、古い人間だな。

   連合赤軍の事件を例に出すわけじゃないけど、かくのごとく失敗や仕事を総括するのは難しいということ。

   日本企業で繰り返し、同じような不祥事が起きるのは、あなたのようにちゃんと仕事の総括をしようという人がいないからですよ。

   謝罪は簡単にするけど、責任の所在を明らかにするような失敗の研究、仕事の総括を行わないのが日本の「組織病」ということだね。

   私は、自衛隊の戦史研究所の人に話を聞いたけど、彼曰く「日本には公式の戦史はありません」とか。驚いたね。今、残っているのは皆、個人史だってさ。

   参謀本部は書類を捨て、焼き、公式の記録なんて残っていない。みんな責任を取りたくないから。今だって、森友学園問題でも財務省の文章なんか捨てちまう国だから。

   ああ、余計なことばかりに話が飛びますね。すみません。

   成功した時は「俺がやった」「俺がやった」と、何もしない人までが関係者として名乗りを上げるのに、失敗すると、われ先に逃げ出すのが日本の組織の本質です。残念だけど、それが実態。

   アナタにはそれを変える、心意気を持ってほしい。頑張ってください。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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