大相撲のモンゴル人横綱を巡る暴力沙汰が大きな問題になっています。
横綱であるなしにかかわらず暴力を振るうことがよろしくないのは間違いないところなのですが、問題の根底には「国技」としてあがめられている「純日本的」大相撲という世界の常識と外国人力士の日常感覚のとのミスマッチ、といったこともありそうだという気がしております。
上がらない外国人労働者のモチベーション
どのビジネス社会でも、ここ20年ほどで急激な国際化が進んでおり、日本的なものと外国人的な感覚をどうすりあわせながらよりよい関係を築いていくのかというのは、じつに悩ましい問題でもあります。
近年話題のダイバーシティの実現とはまさにそれであり、特に海外進出をしている企業では、その苦労が絶えないのだと聞いています。
私が主宰する交流フォーラムのメンバーで、半年前に大手企業A社のタイ現地法人社長として赴任したMさんが、出張で短期帰国されたとの連絡があり、会食しました。サラリーマン生活で初めての海外赴任。しかも、リーダー的立場で半年を過ごした彼の悩みは、やはり日本人とは感覚的に異なる現地のローカルスタッフの活性化に関するものでした。
「わかってはいましたが、文化の違いというのか、国民性の違いというのか、何より悩ましいのはローカルスタッフの仕事への取り組み姿勢です。
彼らのモチベーションは、われわれ日本企業の常識からすると圧倒的に低い。日々もっと自発的に動いてもらうにはどうしたらよいのかと悩み、前向きに仕事に取り組ませるということの難しさを痛感しました」
Mさんによれば、この問題には、じつは歴史的な背景もあるのだといいます。すなわち、安価な労働力を求めて海外進出した日本企業は、「言われたことに忠実に従う」ことを現地スタッフに指示しそれに逆らうことなく従ってきた者をよしと来てきたのだと。
さらに言えば、日本人スタッフとローカルスタッフとのコミュニケーションは最低限でよしとされ、余計なやりとりをせずに定形的に付き合っていくことの繰り返しで近年まできたのだというのです。
しかし、昨今の国内の人手不足と一層の国際化の流れの中で、ローカルスタッフにも「自ら考えること」が期待され日本人スタッフに近い役割期待が課されるようになりました。
この流れは多くの企業に共通するものであり、海外に赴任した日本人管理者たちはどこの企業でも、本社からのダイバーシティ実現の大号令を受けて、大変頭を悩ませているのが現実なのだそうです。