もうイヤだ! 部下を虐めるゴマすり上司 ノイローゼ寸前から身を守る方法は?(江上剛)

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怒られ過ぎてノイローゼになる

   課員のみんなは完全にやる気をなくしてしまった。目は死んでしまっている。

   若い課員なんかは怒られ過ぎて、ノイローゼ寸前。

   私は、課長の次のポスト。いわゆる次席。課長の立場にたったり、課員の立場にたったり、毎日悩むことが多かった。

   課の成績は落ちる一方だ。課長は、ただ怒鳴るだけ。私は本当に悩んだ。

   ある夜、狭い社宅で家族三人、子供を真ん中にして川の字になって眠っていた。

   夢の中で課長と言い争いをし始めた。

「課長、あなたのやり方ではダメです」

   私は、思い切り机を叩いた。その時、「はっ」と思って目が覚めた。私は、恐ろしさに心臓が止まるかと思った。冷や汗がどっと出た。からだに震えが来て、止まらない。

   私の拳の下に、幼い息子の寝顔があったのだ。すやすやと幸せそうな微笑を浮かべていた。もし机を叩くつもりで拳を振り下ろしていたら、息子の顔を潰していたかもしれない。

   私は、その夜、まんじりともせず考えた。そしてこのままだと自分が壊れると思い、決断した。

   翌日の仕事終わりに、明かりを消した食堂の片隅に課長を呼び出した。

   課長は、いったいどうしたのだと不安げな様子で私の前に座った。

   私は課長を正面から見据えて「あなたは私の人事評価をする人です。ですから私は覚悟を決めて申し上げます。課長も覚悟をして聞いてください」と言った。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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