「無知の知」わかります? 聞く耳持たない「独裁」社長が会社をダメにする(大関暁夫)

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キリスト教と「無神教」の違い

   Nさんは自身の海外経験から、欧米では多くの人の根っこにある宗教、特にキリスト教的な精神が、経営者に無意識のうちの「平等」や「相手の立場」というものの考え方を醸成させ、行き過ぎた独裁になることが少ないのではないのかと、推測しています。暴力的に独裁色が強くなりすぎないことで、社員の間に自主性が生まれCの「社員は知っているが社長は知らないこと」の領域も、ある程度の大きさで確保されるようになっているようだ、というわけです。

   とはいえ、Cの領域は大きければ大きいほどいいのかと言うと、それはまた違うようです。

   「C領域が大きくなりすぎるということは、社員の自由な情報活動や発想を経営者が容認しつつも、それに対する聞く耳を持たないからその領域が大きくなるばかり、という状況です。これだと社員の不満がたまるばかりで、離職率の上昇などになりがちなのです」

   では、どのような状態がいいのかというと、「新陳代謝のよい一定量のC領域をつくること」。すなわち、社員の自由な情報活動や発想を容認しつつそれを吸収しようとする姿勢を常に持ち続けることであるのだと言います。

   「じつは、これが日本のオーナー経営者には一番難しい部分なのです。日本人は元来、仏教をベースにしながらも基本は無神教であり、言ってみれば『信じるものは己のみ』という考え方が知らず知らずに根付いています。

   そこが欧米の経営者と大きく異なり、同じワンマン経営者でも、自分と社員の間に絶対的な格差をつけているのです。簡単に言うと、『正しいのは自分だけ』という、無意識の上から目線がCの領域を極限まで小さくしたり、あるいはC領域を無視して大きくしすぎたりしてしまうわけなのです」

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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