投資というのは、将来の不確実性に自分の身を任せるということであり、リスクの高い行為である。
そんな投資に、「絶対正しい」といえる二つの原則がある。それは投資のプロであればだれもがよく知ることであるが、素人にそれを知らせないのがプロのズルいところである。みんながそれを理解してしまうと、甘い汁が吸えなくなるからだ。
今回はその「二つの原則」を書いておきたい。
投資会社に間違いなく取られる「手数料」
第一点は手数料の支払いをできるだけ小さくする、ということ。経費を最小にするというのはどんな場合にでも大事であるが、なぜか投資に関しては高い手数料を支払っても気にとめない人が多いようだ。
投資からどれだけ儲けられるか、どれだけ損するか、将来のことは誰にもわからない。しかし、一つだけはっきりしているのは、手数料は間違いなく取られるということだ。これを下げることができれば、投資のリターン(利益率)は確実に向上する。
特に投資信託の場合は、高い販売手数料と信託報酬の両方を取られることが多い。その合計が投資金額の5%くらいになるファンドはざらにある。
それだけの手数料を支払っても、なお十分な儲けを出すというのは難しい。実際、過去の事例をみると、手数料は高いがそれ以上にリターンは大きい、というファンドはめったにない。手数料が高いファンドというのは投資家を儲けさせるのではなく、投資会社を儲けさせるために存在しているように思える。
第二には、投資を分散させるということ。株式やその他の投資商品にはそれぞれ固有のリスクがあるので、それを分散させることで投資のリスクを減らすということだ。
「卵を全部同じバスケットに入れてはいけない」という諺がある。バスケットを落としてしまうと、卵がすべて割れてしまうからだ。同じように、どこかの固有の企業の株式に集中して投資するというのはリスクが大きい。
運がよければ大きく儲けることができるが、最悪の場合はその会社が倒産してしまいゼロになってしまう。
日本企業の株だけを買っているというのも、世界の中で見れば一つの地域の株に集中して投資しているわけで、国際分散投資に比べるとリスクは大きめである。日本の大企業は不祥事が次から次に起きていて、危険度は高い。そういう企業と心中する義理はないはず。
結局、手数料が低く、分散する投資ができれば問題はかなりの程度解決するのではないか、そのような投資はないのか、という話になる。
カネに国境はない!
たとえば、「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」がある。これは世界の株式に分散投資するファンドで、米国ほかの先進国はもちろん、新興市場もカバーする。いわば「世界経済の将来に投資する」といったファンドである。49か国の7707の株式銘柄に投資しているそうだ。そして、手数料は0.11%(管理報酬)と非常に低い。
過去5年間のリターン(年率)は円貨ベースで19.21%、外貨ベースで10.71%であった(11月4日付のモーニングスターのホームページによる)。過去のリターンは市場の状況によって大きく変わるので、その絶対値にこだわるべきではないし、このファンドにもいろいろとリスクはあることは言うまでもない。しかし、少なくとも低コストと分散投資という条件は満たしている。
もしも読者の皆さんが、このファンドよりもよいリターンを得る自信がないというのであれば、検討してみる価値はありそうだ。それに、こういうファンドを購入すれば、シリコンバレーや中国やインドなどの元気な企業に投資することになる。
カネに国境はない!
現代の「投資の神様」と言われるウォーレン・バフェット氏。彼の運用するバークシャーは長年にわたり驚異的なリターンを実現してきた。1965年~2006年の平均リターン(年利)は20.8%であったが、これは米国を代表する株式指数であるS&P500の9.7%の倍以上であった。
しかし、そのバフェット氏も87歳。このところ彼の引退後の話題で持ち切りだ。2014年、83歳の時に彼は自分の死後の資金運用についてこう述べた。
「私のアドバイスは至極単純である。10%を短期国債にし、90%は低コストのS&P500指数ファンドに運用しなさい」
これが彼の指示である。投資の神様も、低コストと分散を基本に考えていたのだ。(小田切尚登)
※なお、本コラムに書かれた意見は筆者個人のものであり、筆者はどの証券会社、投資会社、投資顧問会社にも属していない。データや意見は参考のために書かれたものであり、具体的な投資の推奨をする目的はなく、投資はあくまで個人の責任と判断で行われるべきである。