前回、カンボジアのバイクで荷台を引っ張る乗り物「トゥクトゥク」が、Uberなどの配車アプリによって時代遅れになっているということをお伝えしました。
これに対して、カンボジアの10年以上先を行っているタイはどうなのでしょう?
公害に渋滞、「トゥクトゥク」敬遠?
パソナタイランドの河野壮典さんに、タイの「トゥクトゥク」について聞いてみました。
「バンコクでは、もうほとんど『トゥクトゥク』はタクシーに置き換わっていますね。安く移動するならスカイトレインや地下鉄が当たり前ですし、タクシーもいくらでも走っています。トゥクトゥクに乗ることはほとんどないですし、あまり見かけなくなってきました」
実際、バンコクでトゥクトゥクは、観光地のまわりでたまに見るくらい。ただ、首都バンコク以外の街では、まだまだ現役で活躍しています。
黒煙をまき散らして走るトゥクトゥクは公害の「元」になりますし、スピードの鈍いので渋滞を引き起こすきっかけにもなります。メリットは値段が安いことくらいです。
しかし、バンコク名物であったトゥクトゥクがなくなってしまうのは、観光客にとっては、ちょっと寂しいものがあります。
あの安っぽいエンジン音が......
タイ政府は、そのあたりの事情をきちんと理解しています。そして、打ち出した政策が、これ。
「『トゥクトゥク』EV化を計画=環境に優しい庶民の足に!」
です。
トゥクトゥクを、電気で動く「e‐トゥクトゥク」に買い換え、改造する費用を補助することです。これなら、お金がないトゥクトゥクドライバーでも更新可能。公害も減るし、なにより、観光客用の乗り物としてタイ名物に成り得ます。
日本だったら、「安全基準がぁ~」などといって速攻で排除してしまいそうですが、タイはその価値を理解して、運転手の負担を最小にしながら、公害などの被害を最小にする手を打っているところが素晴らしいところです。
ただ、 唯一の問題点がありました。
「トゥクトゥク」という名前は、その安っぽいエンジン音が「トゥクトゥク」と聞こえることからついたもので、「e‐トゥクトゥク」になってしまうと無音なので「トゥクトゥク」といわなくなってしまうことです。
それはそれで、ちょっと寂しい気もしますけど。(森山たつを)