命あってのものだね
私は、「企業戦士」(講談社文庫)を書いた際、過労死裁判の支援を少しやりました。だから、わかるのです。
電通事件では、社長が過ちを素直に公判で認めましたが、会社があのような長時間残業による労働基準法違反や過労死の裁判で、簡単に非を認めることなど、まずありません。あれは「電通」という、誰もが知っている大手企業だったゆえにメディアが競うように報道したことで、電通がいかにヒドイ会社であるかが明るみになっただけなのです。
一般に、会社としては過労死を引き起こしたことは不名誉ですし、裁判に敗訴すると、訴えた本人のみならず、他の多くの労働者に対しても未払いの残業代を支払わねばなりませんから、膨大な損失になります。そのため、会社は徹底抗戦します。
たとえば、あなたは仕事ができなかった。毎日早く帰宅していたなどと、ウソを平気で集めます。なかには、愛人がいたなどと名誉を著しく毀損する場合もあるほどなんです。
会社で仲のよかった同僚でさえ、「あなたは無能だった」などと平気で証言します。それが自分たちの身を守るためだと、サラリーマンであればとっさにそう思ってしまうのかもしれません。悲しいですね。
あなたに向かって「〇〇先輩はできた」などという上司は最低ですよ。
どうしても上司が、あなたの仕事を改善してくれないなら、さっさと辞表を出すべきです。
命あってのものだねですよ。(江上剛)