商工組合中央金庫(商工中金)の不正融資の発覚が、金融界に大きな波紋を投げかけている。
政府の危機対応融資を使った不正の悪質さに加え、主戦場となっている融資分野での「民業圧迫」に「商工中金解体論」まで囁かれはじめている。
全100か店舗のうち、97か店で不正
商工中金は、政府の危機対応融資を使った不正に対する調査報告書を、2017年10月25日に発表した。この報告書によると、全100店舗のうち97か店で不正が行われており、危機対応融資が実施された21万9923口座のうち、不正があるとの判定は4609口座。判定不能のため、疑義が払拭できなかったのが7569口座あった。
不正が行われた4609口座での融資実行額は2646億4900万円にものぼり、これに関与した職員数は444人で、危機対応融資に当たった営業職員は延べ約2300人の19.3%にのぼった。
そもそも、この不正がどのようなものだったのかと言えば、本来、災害などで一時的に業績が悪化した企業対して適用される危機対応融資を、健全な企業の財務資料などを改ざんすることで、業績が悪化したように偽装して融資を実行したものだった。
報告書では、不正がはびこった背景を、
「危機対応業務は商工中金の一丁目一番地だと本部や支店管理職から言われていた」
「支店では危機対応業務は達成すべき最優先の項目としてプレッシャーをかけられていた」
「過度なプレッシャーはなかったものの個人として与えられた計画値は達成したかった」
など、業績目標達成や上司からのプレッシャーをあげる者が多かったとし、危機対応業務が業績評価に組み込まれており、営業店では達成することが前提との運用になっていたため、と指摘している。