担当する業務で給与ベースを決めろ!
では、処方箋はどうあるべきか――。まずは各人の給料を担当業務に応じて決まる職務給に見直したうえで、育休などで誰かが負担した場合はきっちりその分を上乗せすることだ。
たとえば、担当する業務で給与ベースを決め、Aさんは30万円、Bさんは40万円受け取っているとする。仮にAさんの育休に伴って担当業務をBさんが引き継ぐことになれば、Bさんは30万円受け取ることができる。
むろん、猛烈に働いて丸々受け取ってもいいし、予算の範囲でアシスタントを一人雇ってもいい。そうしたことを決める裁量と報酬をセットで与えられれば、育休取得者に対する不満が一方的に高まるということはないだろう。
じつは、この構図は「有給休暇がなかなか取れない空気がある」「仕事が終わっても早く帰りづらい雰囲気がある」といった問題と共通するものだ。
戦後の日本型組織は、責任と報酬の基準を曖昧にすることで疑似的な共同体を生み出し、従業員から高い貢献度を引き出すことに成功してきたが、同時に「個々の権利を行使しづらい空気」も生み出してきた。
もはや滅私奉公で銭が稼げる時代でもないのだから、そろそろ旧態依然とした組織を見直したほうがよいのはなかろうか。(城繁幸)