保険には必要な保険と、そうでない保険があります。いや必要でないというよりは、保険に加入するには、優先順位があるといったほうが正確でしょう。
まだ若くて、結婚したばかりで子供が小さいときは、いざというときのためのリスクヘッジを考えたほうがいいでしょう。リスクヘッジこそが保険の本丸なのです。
まず「就業不能保険」を
若いときに加入すべき保険といえば、真っ先に「就業不能保険」が必要といえます。
たとえば、病気やケガで長く働けない状態が続いたら、月々の収入が大きく減るばかりか、病気などの治療費に加えて、住宅ローンの支払いや子供の教育費、家族の生活費といった日々の生活費に困ります。病気になっても、毎月の支払いは待ってはくれません。そんなときに毎月の給与のように、生活費をサポートしてくれるのが就業不能保険です。
生命保険文化センターの「生命保険に関する実態調査 2017年」によると、世帯主が病気やケガのため長期間働けなくなった場合の生活資金を備えているかどうかを聞いたところ、「準備できている」と答えた人は20.6%、「準備できていない」人は79.4%にのぼったそうです。
ふだんから働けなくなった場合の生活資金を備えている人は、わずか2割です。まだまだ働けなくなるリスクへの備えは十分に普及していないようです。
医療保険は入院費用などをサポートしてくれますが、それは自分自身のためです。家族の生活費などお金の心配をしながらの治療では、治るものも治りません。
あなたが入院したり治療に時間がかかったりすることで困るのは、なんといっても家族です。からだの心配をするうえに、お金の心配まですることになっては家族も参ってしまいます。
そう考えると、これまでの保険は主として死んでから必要な資金を用立てるためのものでしたが、今は生きるために必要なのが保険だということがわかります。この話は、一人暮らしの場合も同様です。
子どもの将来のために!
若くして加入する必要があるとすれば、もう一つは「死亡保険」です。特に小さなお子さまがいる場合は必要不可欠です。子供の教育費は、国公立で大学まで行かせるとすれば1人当たり約1,000万円、私立なら1人当たり約2,000~3,000万円かかるといわれています。
そこで、お子さまが1人なら、1,000万円~3,000万円の死亡保険(10年定期もしくは20年定期)を買っておくことが必要です。いざという場合のお子さまの教育費を担保するのです。これは親の責任だと僕は思います。
このほかに、学資保険がありますが、これはお子さまの学資をどうやって貯めるかということ。前回お話したように、ゼロ金利の下では、保険に貯蓄機能を求めるには無理があります。定期預金や投資信託、いま流行のNISAなど、他の貯蓄手段と学資保険のどちらがトクか、よく比較して選ぶと良いと思います。(出口治明)