「ご飯の友」や「食卓の友」などといわれ、小魚や海藻を粉末にしたり、出汁をとった後の鰹節などを捨てずに再生したりしたうえで、胡麻や海苔を加えてつくった「ふりかけ」。ごはんを主食とする日本人には、目立たないけどなくてはならない存在だ。
そんな「ふりかけ」が今、ごはんだけじゃない、活躍の場を広げている。
コラボ商品続々 「カップめん」との相性いいかも!?
即席めんの「チャルメラ」でおなじみの明星食品は、丸美屋食品工業の人気商品「のりたま」ふりかけを使った「明星 のりたま 焼うどん だし醤油味」を、2017年10月2日に再発売した。今年5月に数量限定で販売したところ、消費者からの反響が思いのほか大きく、「復活」を決めた。
開発の背景について、明星食品は「さまざまなソースや具材、そしてふりかけを試している中で、カップめんにはそもそも『ふりかけ』と表記で資材を使用しているので『ふりかけ』と親和性が高かった。自社他社さまざまなコラボ商品、コラボフレーバーが登場するマーケットの中で、ふりかけの王様『のりたま』を使った商品を開発できないか、ということになりました」と話す。
また、「カップ麺業界はひとつの商品のサイクルが短く、毎週のように新商品が発売される」という。再発売して1か月。「売れ行きは好調」という 。
一方、日清食品は10月5日に、オンラインストアで2160円以上の商品を購入した消費者、先着2万人に非売品の「カップヌードルふりかけ」をプレゼントした。このふりかけは、「カップヌードルに入っている、謎肉・エビ・たまご・ねぎ、すべての具材を入れ、カップヌードル特有の食べる前の香りやクセになる後味を感じることができる」という。
「カップヌードルふりかけ」はもともと、同社のFacebookで「空想商品」として紹介されていたもので、商品化を望む声や好意的な声が多かったことから、プレゼント企画に用意した。カップヌードルの味や食感を、ふりかけでどれだけ再現できているのか、気になる消費者も多かったもよう。こちらも大きな反響を呼んだ。
これまでにも、ふりかけメーカーのニチフリが、コイケヤとコラボし、「カラムーチョふりかけ」を開発したり、ペヤングと「やきそばふりかけ」を開発してきた。今回の「のりたま味焼うどん」や「カップヌードルふりかけ」も好評で、ふりかけと他の商品とのコラボ商品の開発は、さらにヒートアップするかもしれない。
「のりたま」、過去最高の年間6億3000万食
一方、ふりかけの最大手である丸美屋によると、取り扱い開始後すでに55年~57年が経過している「のりたま」や「すきやき」といったロングセラー商品の売れ行きが好調という。
最近のふりかけのマーケット動向について同社は、「ふりかけの全体のマーケットは横ばいですが、『のりたま』は年間6億3000万食(2016年)を売り上げ、過去最高の記録を更新しています。加えて、おにぎりなどに混ぜ込んで使う『まぜこみわかめ』などの直(じか)詰めと呼ばれる30グラム~50グラムの大きい袋入りの商品が堅調です」と話す。
この傾向は、特に2008年のリーマンショック以降に顕著で、「節約で多くの人がお弁当を作るようになり、コストパフォーマンスのよい大袋のふりかけに人気が集まっているのではないでしょうか」とみている。
3種のふりかけ「あを」「丹(に)」「よし」愛好家がレシピサイト
赤じその人気ふりかけ「ゆかり」を取り扱っている三島食品(広島市)は、2016年の業績が増収増益の過去最高を記録。その要因のひとつに、「ペンの先からふりかけがでる、ペンスタイルの『ゆかり』のヒットにある」という。
このペンスタイルのふりかけは、14年11月に発売された後、インターネットで取り上げられ、爆発的なヒットとなった。また17年4月には、「ゆかり」に「かおり(青じそ味)」と「あかり(たらこ味)」の姉妹がいると、この「3姉妹」の話題がツイッターで拡散。それにより、それぞれの単品の販売も増加した。
三島食品によると、「今年1月~9月の『かおり』と『あかり』の売り上げは、いずれも前年同期比で1.5倍以上となっています」と話している。
同社は、観光スポットで独自の取り組みも行っていて、その一つに奈良県の興福寺の境内で、枕詞「あをによし」からとった「あを」「丹(に)」「よし」という、動物性食品を使わない精進ふりかけ3種を、2013年から販売している。通販もなく、興福寺でしか手に入らないふりかけとして好評で、愛好家の間でレシピサイト「あを・丹・よしレシピサイト」が立ち上がっているそうだ。
お膝元の広島の観光地、宮島の料飲組合と、牡蠣を高温高圧でドライ状にしたふりかけを共同開発して土産物店などで販売したり、「ゆかり」の原料の赤じそを使った「赤ジソジュース」や「赤ジソ入りのダックワース」を販売したりしている。
地域限定商品や素材を生かした、メーカーのこだわりに応じた新しい商品開発もまた進んでいる。(戸川明美)