「のりたま」、過去最高の年間6億3000万食
一方、ふりかけの最大手である丸美屋によると、取り扱い開始後すでに55年~57年が経過している「のりたま」や「すきやき」といったロングセラー商品の売れ行きが好調という。
最近のふりかけのマーケット動向について同社は、「ふりかけの全体のマーケットは横ばいですが、『のりたま』は年間6億3000万食(2016年)を売り上げ、過去最高の記録を更新しています。加えて、おにぎりなどに混ぜ込んで使う『まぜこみわかめ』などの直(じか)詰めと呼ばれる30グラム~50グラムの大きい袋入りの商品が堅調です」と話す。
この傾向は、特に2008年のリーマンショック以降に顕著で、「節約で多くの人がお弁当を作るようになり、コストパフォーマンスのよい大袋のふりかけに人気が集まっているのではないでしょうか」とみている。
3種のふりかけ「あを」「丹(に)」「よし」愛好家がレシピサイト
赤じその人気ふりかけ「ゆかり」を取り扱っている三島食品(広島市)は、2016年の業績が増収増益の過去最高を記録。その要因のひとつに、「ペンの先からふりかけがでる、ペンスタイルの『ゆかり』のヒットにある」という。
このペンスタイルのふりかけは、14年11月に発売された後、インターネットで取り上げられ、爆発的なヒットとなった。また17年4月には、「ゆかり」に「かおり(青じそ味)」と「あかり(たらこ味)」の姉妹がいると、この「3姉妹」の話題がツイッターで拡散。それにより、それぞれの単品の販売も増加した。
三島食品によると、「今年1月~9月の『かおり』と『あかり』の売り上げは、いずれも前年同期比で1.5倍以上となっています」と話している。
同社は、観光スポットで独自の取り組みも行っていて、その一つに奈良県の興福寺の境内で、枕詞「あをによし」からとった「あを」「丹(に)」「よし」という、動物性食品を使わない精進ふりかけ3種を、2013年から販売している。通販もなく、興福寺でしか手に入らないふりかけとして好評で、愛好家の間でレシピサイト「あを・丹・よしレシピサイト」が立ち上がっているそうだ。
お膝元の広島の観光地、宮島の料飲組合と、牡蠣を高温高圧でドライ状にしたふりかけを共同開発して土産物店などで販売したり、「ゆかり」の原料の赤じそを使った「赤ジソジュース」や「赤ジソ入りのダックワース」を販売したりしている。
地域限定商品や素材を生かした、メーカーのこだわりに応じた新しい商品開発もまた進んでいる。(戸川明美)