中小企業の社長は「操舵」の意味を理解せよ!
この「操舵」を企業経営に置き換えるなら、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を、めまぐるしく移り変わる環境の中で、いかに適切に活用、投下して、より大きな成果を上げられるような中長期的な戦略を構築し、自社を前に進めていくのか、ということになるでしょう。
もちろん、その過程においてルール違反などの不祥事が起きないように内部的な管理を並行して行うことも、ガバナンスが指し示すことの一部ではあるのですが、そればかりが注目されるのは正しい理解であるとは言えないのです。
昨今、ガバナンスは上場企業を対象としたコーポレート・ガバナンスコードが制定されたなどというニュースが新聞紙上に踊ったこともあり、コンプライアンスに比べて中小企業には縁遠く、上場企業はじめ大企業向けの課題と思われがちでもあります。
しかし、本来の「中長期的な企業価値向上を戦略的に考える」という意味合いを踏まえるなら、じつは企業規模に関わらず、どの企業にとっても、発展に向けては必要不可欠な要素であると理解いただけるのではないかと思います。
中小企業はややもすると、目先の業績や短期的な戦術をどうするか、という視点でばかりモノを考えがちで、中長期的な視点に欠けている、そんな印象が強くあります。
一方で、マイナス金利に苦しむ地方銀行には監督官庁である金融庁から、決算書と担保に頼らない事業性評価に取り組み、地域の中小企業の将来性に着目して融資を積み上げよ、とのお達しが出ています。せっかく決算書と担保に頼らない審査をする流れが動き出しているのに、肝心の中小企業の側に中長期的な視点がなくては、銀行は事業性評価のしようがないのです。
私に質問をくれた、お二人の社長にはそんな事情も踏まえて、中長期的な視点に立ったガバナンス構築の重要性についてお話をさせていただきました。ガバナンスはコンプライアンス同様、すべての企業にとって重要であり、特に中小企業に欠けている成長に欠かせない視点を補うものであると、相次ぐ不祥事報道をきっかけとして正しい理解が広まらないものかと、切に願うところです。(大関暁夫)