先般も相次ぐ大企業の不祥事関連の話題を取り上げましたが、この問題に対する中小企業経営者の関心も当然の如く高いようです。
ここにきて、知り合いの中小企業のお二人の社長から相次いで同じような質問を受けました。それは、「企業不祥事がらみでよく耳にするガバナンスとコンプライアンスの違いは何か」「コンプライアンスもちろん知っているが、ガバナンスとは上場企業向けコンプライアンス基準のことか」というものです。
しかも、お二人ともこの質問をされたときのニュアンスが、「中小企業のうちには関係ないだろうけど、一応聞いておく」的なものであったのが、印象的でもありました。
コンプライアンスとガバナンスの違いは?
確かに、「コンプライアンス」は日本で語られるようになって早20年近くが経ち、法令遵守という比較的理解しやすい日本語訳の存在も手伝って(その訳が適切であるか否かは別として)、中小企業経営者あるいは従業員にもかなり浸透してきているように思います。
一方の「ガバナンス」はどうかと言えば、その用語の登場時期こそコンプライアンスと大差ないものの、なぜかその用語的理解においては、かなりな心許ない感が否めないのは厳然たる事実ではないでしょうか。
まずはその和訳ですが、一般には「企業統治」と訳されるケースが多いようですが、この言葉自体がわかったような、わからないような、じつに曖昧な日本語訳である印象です。
そのうえ、不祥事がらみのニュース報道でばかり耳にしていると、ガバナンスという言葉を聞くと、「不正を正す」とか、コンプライアンス同様の「法令を守る」といった意味合いとして受け取られしまいがちなようです。
実際には、ガバナンスはラテン語の「Gubernare」が語源の、船を操舵することを意味する言葉です。「操舵」とは、ただ単に舵をとって船を前に進めることだけを意味しているのではありません。船の構造や性質、乗務員の力量や健康状態、さらには積荷が何であるかなどにも配慮して、気象を勘案し海図を読み込んで、目的地まで安全かつ迅速に到着させることを意味しているのです。
すなわち、単に悪いことやマイナス事象が起きないように注意を払うばかりではなく、いかに前向きにより良い成果を上げるかまでをも含んでこその操舵なのです。