マンションの住み替えや地方に住んでいる人が都心部の分譲マンションを購入するとき、マイカーを手放すケースが増えるかもしれない。
マンションの購入時に、駐車場の有無を条件にしている人は少なくないが、いまや首都圏マンションの駐車場設置率は半分以下に激減しているのだ。
ピーク時の設置率は77.3%
クルマを所有している人は住まいやその近辺に駐車場があることが必須。多くの人がクルマを保有していた時代では、マンションも駐車場が総戸数に対して100%近くあるのが当たり前だった。
ところが、最近の10年でマンションの駐車場事情は一変。マンション市場などを調査する、不動産経済研究所の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の「新築分譲マンションの駐車場設置率調査」(2017年9月12日発表)によると、首都圏マンションの駐車場設置率は、ピーク時の2007年は77.3%(発売戸数6万1021戸、駐車場4万7179台分)まで設置率は上昇したが、その後08年に72.1%(発売戸数4万3733戸、駐車場3万1527台分)と下落に転じると、11年には56.4%(発売戸数4万4499戸、駐車場2万5117台分)と60%を下回り、13年には48.0%(発売戸数5万6478戸、駐車場は2万7475台分)と50%を割り込んだ。
16年は45.2%(発売戸数3万5772戸、駐車場1万6171台分)で、とうとう17年上半期(1~6月期)には発売戸数の1万4730戸に対して、駐車場は6218台分、設置率で42.2%にまで落ち込み、歯止めがかからない状況だ。
エリア別にみると、東京23区内は2007年に発売戸数の1万6563戸に対して、駐車場は9273台分、設置率で56.0%とピークを記録。それが09年には、47.1%(発売戸数1万6387戸、駐車場7721台分)と50%を下回り、16年には28.9%(発売戸数1万4764戸、駐車場4267台分)と、とうとう20%台にまで落ち込んだ。
17年上半期は、発売戸数の7008戸に対して、駐車場が2064台分、設置率29.5%と30%にはとどかなかった。ただ、前年よりやや回復。東京23区内については、下げ止まりの傾向が表れてきたようでもある。
クルマの保有減って、カーシェアリングの普及が拍車
こうした駐車場の減少要因はいくつかある。ひとつは若者のクルマ離れが伝えられているように、クルマを保有する人が減っていることだ。高齢者も、運転に自信がないなどの理由でクルマに乗らない人が増えている。
それに伴い、クルマの販売台数も減っていて、2016年の新車販売台数をみると、乗用車は9.6%減の414万6458台。このうち、普通車は10.0%増の149万台だったが、小型四輪車は2.9%減の131万台、軽四輪車は11.0%減の134万台と、減らした。この10年間で前年実績を上回ったのは、2010年と12年、14年の3年だけだった(日本自動車工業会調べ)。
経済的な理由もある。クルマを維持、走らせるためには、税金のほか、駐車場代やガソリン代などの費用がかかる。その一方で、都心ほど公共交通機関が発達して、クルマを必要としないライフスタイルが広まった。カーシェアリングの普及も一つの要因と考えられている。最近、人気のマンションは多くが駅近どころか、駅に隣接している。
マンションは、かつてほど駐車場が満杯になる状況ではなくなっており、むしろ駐車場スペースは宝の持ち腐れ。住戸スペースなどに充てたほうがいいということになる。
不動産経済研究所は、「今後もクルマを手放してマンションを買い換える世帯などは、利便性の高い駅近の物件などで増加といった傾向が一層強くなる傾向から、駐車場の設置率は緩やかに低下を続ける」とみている。
中古マンション事情...... 駐車場をなくすワケにはいかないワケ?
その一方で、中古マンションでは、駐車場の確保で悩ましい問題が持ち上がっている。マンションに設置されている駐車場は、マンションの管理費とは別に駐車場代を徴収する仕組み。その駐車場代は、マンションの管理費や修繕積立金などに充てられている。
駐車場代の相場は、都心ほど高くなる傾向だが、東京23区内では千代田区や港区で5万~6万円、世田谷区や杉並区で3万円程度が相場とされる。駐車場に空きが出るということは、予定していた管理組合の収入が減るので、マンションにとって、それはそれで問題というわけだ。
マンション管理組合の一部では、マンション内に空き駐車場があることを知らせ、敷地外に借りている人や2台目の駐車場がほしい人などの希望者を募ったり、駐車場代や管理費を見直したりするなどの対策を取りはじめている。最近はコインパーキングなど、マンション外に駐車場を貸し出すところも出てきた。