スーパーマーケットに行き、お茶の並んだ棚を眺めていた。すると、ボトルの包装に「消費者庁許可 特定保健用食品」という表示があって、値段も割高なものが何種類も目についた。
略して「トクホ」と呼ばれる飲料である。
健康にいいけど、「トクホ」だけでは食事が偏る?
それら「トクホ」飲料の包装には、さらに「体脂肪を減らすのを助ける」「血中コレステロールを減らす」「糖の吸収をおだやかにする」「血圧が高めの方に」などと、それぞれのお茶を推薦する理由が書いてある。
これらの宣伝文句はメーカーが勝手に作ったのではなく、そうした「保健機能」があることを消費者庁が認めているのだ。トクホ制度は今年(2017年)で創設26年になり、国民の健康増進がうたい文句である。
対象は何もお茶に限らない。乳酸菌飲料、コーラ、ヨーグルト、サイダーからスープ、みそ、ごはん、パン、豆腐、ソ-セージなどがあり、「A社の〇〇茶」「B社の△△麦茶」というふうに数えていくと、品目数は1000を超える。
トクホのチューインガムもあり、包装には「歯を丈夫で健康に保ちます」とある。
でも、健康にいいというので、トクホだけを集中的に飲んだり食べたりしていたら、体がますます丈夫になるのだろうか。いや、食生活が偏ってしまう結果、逆に体調を悪化させることもあるみたいだ。
そのせいだろう、トクホの包装には必ず「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という注意書きがある。どのトクホも句読点に至るまで、まったく同じ表現だ。消費者庁の指示によるものだろう。
しかし、バランスの取れた食事は、何もトクホの包装に教えてもらうまでもなく、食生活の基本である。そんな分かりきったことまで表示しないと、トクホを安心して売れないというのは、どこかおかしくはないだろうか。
「トクホ」「栄養機能」「機能性表示」...... 消費者はなんだかわからない
ところで、「トクホ」のように健康や栄養に関する機能の表示が認められている食品を「保健機能食品」と呼ぶが、これにはトクホのほかに「栄養機能食品」と「機能性表示食品」がある。
前者はビタミンやミネラルなどの補給を目的とする食品、後者はメーカーが自己責任で保健機能や安全性を消費者庁に届け出る食品のことだが、普通の消費者にとってはなんともややこしい。付き合いきれないなあ、という気持ちにもなってくる。
バランスの取れた食事、そして適度の運動と十分な睡眠――それを心がけていれば、私たちはおおむね健康な生活を送れるはずである。トクホだのなんだのといった役所のお墨付きに頼らずに、自分で考え、判断していれば、済むことではないのだろうか。
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