幹部が経営に無関心、その原因は?
ここまではよくある英会話スクール入学きっかけ話なのですが、さすがベテラン経営者のYさん、恥を忍んで突然この話を皆にしたのには少しばかり深いわけがあったようです。
「この英会話学校って、1回の時間は30分とものすごく短いのです。ところが至って少人数。時にはマンツーマンってこともある。テキストなんてなんもなし、あるのは外国人講師との英語のみの会話だけ。しかも教えてくれるというよりは、話しかけられてこちらがそれに答えていくのだけど、これが不思議と身について上達していく実感があるのです。それを感じると同時に、じつはものすごく反省もさせられちゃったのですよ。うちの幹部が、いくら口うるさく言っても経営に無関心なのは、僕が原因じゃないのかと。英会話だけじゃなく、僕は仕事でも知識偏重で、育ってほしい幹部とのかかわり軽視だったのじゃないか、とね。これって、もしかして受験校育ちの悪弊かなと思わされました」
はじめはYさんの英会話スクール入学を茶化していた周囲も、神妙な顔つきでYさんの話に聞き入ります。
「簡単に言うと、机上の勉強はそれなりに重要だとはしても、現実社会はそれだけで通用するほど簡単なものじゃない、その点は英会話も組織運営も同じなんじゃないか、って。僕は幹部社員に名著と言われるビジネス書やビジネス誌とかをもっと読むように言っているのですが、それは知識の蓄積にはなっても現実の企業経営に関心を持って前向きに取り組むようになるには、もっと違う何かが必要なんじゃないかと思いました。すなわち自分の日常は、英会話ならぬ経営会話が足りていないのじゃないか、と思ったのです」
英会話スクールは知識の蓄積を求めるものではなく、質問と回答という自然なやり取りの中から身になるものを生み出していく、そんな行程での英会話上達の実感は経営者であるYさんの心を揺さぶったようでした。