これで私も「真人間」? 皇居の「勤労奉仕」へ行ってきた!(北条かや)

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   10月の初旬、4日間の「皇居勤労奉仕」に参加してきた。15人以上の有志がひとつのグループとなり、皇居と赤坂御用地で、草むしりや清掃などの軽作業に従事する。ノーギャラで宮内庁や皇室にご奉仕するイベントということになるが、平成になってからすでに数十万人の国民が参加しているという。けっこうな人気で、時期によっては抽選になることもあるらしい。

   今回は仕事関係の知人に誘われ、まったくの好奇心だけで行ってみたが、非常によかった。皇室にそれほど詳しくない自分でも、あの独特の雰囲気にすっかりハマってしまったのだ!

  • 一心不乱に草むしり(写真はイメージ)
    一心不乱に草むしり(写真はイメージ)
  • 一心不乱に草むしり(写真はイメージ)

思想的なこだわりをもった人もいるのでは......

   私が参加したのは、20人ほどのグループ。自営業者や士業のメンバーが中心で、男女比は半々だ。事前に飲み会を開催していたこともあり、初日から和気あいあい。すぐに何名かのメンバーと仲良くなった。

   じつは、参加するまで、「グループの中に過激な思想をもっている人がいたらどうしよう」と心配していた。なにしろ皇居に4日間通い詰め、清掃作業の合間には、天皇皇后両陛下とお会いできるかもしれないという一大イベント。思想的なこだわりをもった人もいるんじゃ...... と、微妙に身構えていたが、まったくの杞憂に終わった。

   拍子抜けするほど、みんな「団長に誘われて好奇心から参加した」とか、「最初は『勤労奉仕ってなんだろう?』って感じだったよ~」と言うのである。思想的な集団ではなく、異業種交流会のような「意識の高いグループ」であった。

   コミュニケーション力が高く、仕事のデキる人たちという印象だ。

「ナゾ」の安堵感に包み込まれ、一心不乱に草むしり

   参加者は事前に、公安のチェックを受ける。数か月前から本籍地情報などの書類を提出して、「皇居に立ち入らせてもOKか」審査されるのだ。

   団長は冗談交じりに、

「ここにいるのは公安の厳しいチェックを通過した人たちなので、思想犯や前科持ちはいません。その意味では、『まとも』な人たちだから、深い話をしても大丈夫です(笑)」

と言ってメンバーを笑わせていた。

   なんだか楽しい。とても楽しい。

   さらに、宮内庁の規則では、広い皇居を1日歩いて清掃をこなせる「健康な人」しか参加できないから、メンバーは皆元気ハツラツだ。毎朝7時集合で、グループのひとりでも遅刻すれば「全員参加NG」。作業中も時間厳守で、皇居内を歩く際は4列で行進しなければならない。

   この厳しいルールに適応できる人たちだから、とにかく皆しっかりしている。仕事をサボる人もいない。

   そうか、私は今、「国家によって『信用できる』と判断された人たち」の中にいるのだ。そう思うと震えた。公安の審査を通過した「労働者」として、ここにいていいんだという、謎の安心感。あの包み込まれるような感覚は何だったのか、今もよく分からない。

   まあ包まれすぎると危険な気もするが、「あなたはここにいていいですよ」という、ナゾの安堵感のもと、一心不乱に草むしりをこなした。

   時間もきっちり守った。もともと自堕落な性格なので、早起きへのプレッシャーから徹夜してしまうなど結構なヘマをやったが、4日間でなんとか夜型生活を改めることもできたと思う。

   厳しい勤労奉仕を経て、少しは「真人間」に近づけただろうか――。しかし今、この原稿を締め切りギリギリに書いていることを思うと、やっぱりあれは非日常の労働体験だったのかもしれない。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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