吠える社長はもう懲り懲り! 組織の問題点は「会議」に現れる(大関暁夫)

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   「会議の達人」というセミナーの講師を定期的に勤めています。

   会議は組織内の代表的なフォーマル・コミュニケーションであり、会議にはその組織の風土が必ず現れます。私は、組織運営や組織活性化に係るお手伝いを依頼された時には、まっ先に社長以下、幹部社員をメンバーとする会議に同席させてもらうようにしています。組織風土を知り、その組織の問題点を知るには、それが一番の近道だからです。

  • 社長、目立ちすぎです。
    社長、目立ちすぎです。
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会議で意見が出ない理由、大きくはふたつ

   「会議の達人」では、出席者たちの自社の会議におけるお悩みを具体的に聞いています。そんな中で、毎回、最も多いお悩みが「会議で意見が出ない」というものです。意見が出なくては会議になりません。「会議」を字のままに解釈するなら、「会」って、すなわち相対して「議」論することですから、意見の出ない会議では議論になりようがないのです。

   会議で意見が出ない理由は、大きくふたつのパターンがあります。ひとつは社歴が古く、日々同じ業務の繰り返しの中で、会社の風土そのものが沈滞ムードとなり、社長以下社員の士気が著しく下がっているケースです。ただ、幹部社員がセミナーに参加するような、比較的前向きな姿勢が感じられる企業では、もう一つの理由のほうが圧倒的に多いのです。

   それは、トップが超ワンマンで、会議で出された意見をことごとくつぶしてしまい、結果的に誰も意見を言わなくなってしまうというパターン。先日のセミナーでも、「会議で意見が出ない理由と思われること」を聞いてみたところ、例外なく全員が会議におけるトップのワンマン運営を挙げていました。

   ワンマンなトップはなぜ、会議まで自身の独占状態にしてしまうのでしょうか――。

無口な部長たちに、業を煮やす3代目社長

   人づてに紹介された機械商社のH社のT社長は3代目。大学卒業後、大手商社で10年ほど勤務。父である前社長の入院を機に、想定外に取締役として自社に入社します。結局5年後に自身が社長に就任したものの、長年超ワンマンだった先代の管理下で失われた社員の覇気は戻りようもなく、どうしたら活性化できるのかと、相談を持ちかけてきました。

   私は組織における会議の重要性を説明。オブザーバーで会議に出席させていただけるなら、所見アドバイス程度はさせていただきますとお話して、同社を訪問することになりました。

   H社の会議は、私からすると壊滅的とも言える状況でした。総務部長が形式的に進行役を務めてはいるものの、なかなか出ない意見に業を煮やして、一たび社長が話を始めると、口調は優しくとも、出されるのは指示、命令の数々。さらには無口を貫く部長たちに何か話をさせようと、一人ひとりを指名して個別報告を求めるようになると、会議は完全に報告会の様相を呈していきます。

   終始、社長一人が一生懸命に話したり報告をさせたりの状態が続き、会議は終了となりました。この活性化とは無縁と言えるH社の会議。問題なのは果たして、部長たちなのか、それともT社長なのか――。

   米国UCバークレーで、ヘンリー・チェスブロウ教授と並ぶ看板教授のアンドリュー・アイザックス氏は、次のように言っています。

「強い専制的リーダーシップで組織をまとめることを善しとする時代が去った現代では、トップであれ、管理者であれ、リーダーたる者が『一人で考える』ことはもはや適切ではない。リーダーたる人間は、『一緒に考える』能力を開発することが求められている」

   アイザックス氏は、NASAで最先端技術者として勤務した経験から、組織活動が素晴らしいものを生み出すために、参加者が相互に意見を出し合い、共同作業をすすめさせるようなリーダーシップの重要性を学んだのだと言います。

たまには部下の「結論」に従ってみては......

   アイザックス氏はこうした考え方を活かして、大学では自身がリーダーシップを執りながら大学院の学生とビジネススクールの学生が議論しつつ、新たなものをつくり出すという講義をすすめ、大きな成果を得ています。

   T社長の一方的に指示する姿や、次々と報告を求めるやり方は、結局のところ超ワンマンだった先代と大きく変わるところはなく、アイザックス氏が言うところの旧態然とした「一人で考える」姿勢そのものだったです。

   では、T社長はなぜ、「一緒に考える」ことができないのでしょう。創業者やその直系後継者で当該組織では本格的には下働きをしたことのない人、サラリーマン社長でも長くその地位にある人などは、自分と社員の区別をつけすぎることがその大きな理由としてあげられると思います。

   そして、その区別が結果的に自身を孤独に追い込み、「一人で考える」ことに陥らせているのではないかと思うのです。

   ならば、アイザック氏の言う「一緒に考える」とは、少なくとも会議において、社長自身も一参加者に徹して、どんな流れでも勝手に進行しないこと。まずは自分が話すのではなくメンバーの意見を聞き、それを上から目線で潰さないこと。

   時には失敗を恐れることなく、あるいは失敗を責めることなく、自分抜きで物事を決めさせ、その結論に従ってみること。今の時代のリーダーには、そのような対応に徹する姿勢をつくることが求められているのです。

   T社長には、そんなアドバイスをさせていただきました。1回会議を見ただけの所見ではありましたが、少なくとも大手商社で10年のサラリーマン経験がある方なので、なにがしかの有益な対応をしていただけるのではないかと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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