新しく中途採用の社員が入社したのをきっかけに、仕事のやり方を変えていきたいと考えています。そのことは、彼にも現在勤めている社員にも伝えていました。ところが、古くから在籍する社員は、頑として新しい仕事のやり方を受け入れようしません。その彼が、以前の会社の仕事のやり方を押しつけようしたことが原因のようですが、会社もそのやり方のほうがよいと判断して進めようとしているのに反発するのです。彼も強引だった点は反省しているようですが、両者はギクシャク。どう進めていけばいいのか。妙案はありませんか?
アナタの会社、どうしようもないですね。リーダーがいないのですか?
中途採用の彼は遮二無二がんばったのに......
中途採用の社員が入社して、それをきっかけに仕事のやり方を変えるなどというのは、現場の思い付きでやれる話ではないでしょう。
彼も強引だった点を反省している? なんですか、その言い方は。
彼は、自分が期待されていると思って遮二無二がんばったのに、「君のやり方がちょっと強引だったね」なんて言われたら、二階に上がって梯子を外されたのも同然でしょう。
中途採用の理由に、会社の仕事のやり方を変えるというのがあるなら、これはまさに社長の仕事です。
もしかしたらアナタは社長ですか?
それなら社員に、会社の仕事のやり方の問題点、改善の方向性などをきちんと説明するべきです。
そして仕事改革のリーダーに中途採用の彼を任命するなら、彼の位置づけをみんなに徹底するべきでしょう。
その上で彼がどのように仕事のやり方を変えたいのか、古株の社員や他の社員たちと徹底して議論させねばなりません。
彼のやり方が、パーフェクトというわけではないからです。
その議論の場には、社長であるアナタ自身も深く関与しないといけません。
このように社長あるアナタがリーダーとして皆を引っ張ってこそ、仕事改革は上手くいくのです。
中途採用の彼に任せっぱなしにするのは、せっかくの人材を活用できていないことになるでしょう。
他社の「血」が入ってこそ組織が変わる
「翼、ふたたび」(PHP文庫)という小説で、日本航空(JAL)の再生を描きました。
JALの再生では、京セラの稲盛和夫氏が、徹底してJALの仕事のやり方、考え方を変えてしまいました。
彼のフィロソフィを浸透させるために彼自身が先頭に立ち、社員たちと車座になって議論したのです。
こうして初めて会社は変わっていくのです。
また「組織再生」(PHP文庫)では、1990年代後半の金融危機で経営破たんした日本長期信用銀行の再生で陣頭指揮を執り、新生銀行に蘇らせた元シティバンク日本代表の八城政基氏を描きました。
彼は言います。組織を変えようとすれば、一人や二人を中途採用してもダメだ。少なくとも組織の半分が中途採用、すなわち他社の「血」が入れば、組織は変わっていくと。
その通りなのです。今までは身内の基準で自分や仕事の価値を計っていましたが、中途採用者が多くなると、古株の社員でも、自分の評価を客観的に見ざるえなくなるのです。そうなっていくと組織は自然と変わっていきます。
これが自分の評価に市場性をもたらすということです。それまでは身内だけで自分の価値が図られていたのですが、中途採用者が増えることで、自分の価値に客観性が生まれ、市場での価値が分かるということになります。
八城氏は、こうやって仕事のやり方を変えていきました。
いずれにしても会社の仕事のやり方を変えるのは、社長の仕事です。中途採用の一社員の仕事ではありません。(江上剛)