その29 分かりにくい「電車の種別」 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   僕は埼玉県から東武鉄道の東上線を利用してときどき東京・池袋に出かけている。

   その東上線にいつごろからか、電車の種別に「急行」「準急」などに加えて「快速」や「快速急行」が現れた。

  • 東武鉄道の車両にある「快速」の表示。この電車は「快速急行」よりも遅く、「急行」よりも早い。
    東武鉄道の車両にある「快速」の表示。この電車は「快速急行」よりも遅く、「急行」よりも早い。
  • 東武鉄道の車両にある「快速」の表示。この電車は「快速急行」よりも遅く、「急行」よりも早い。

「快速」と「急行」はどちらが早い?

   電車の種別というものは、僕の子供のころから「特急」「急行」「準急」「普通(各駅停車)」というのが一般的である。そこへ新しいものが出てきたのだ。

   しかも、埼玉県のわが駅には急行は止まるが、快速と快速急行は止まらない。そのせいもあって、僕には快速、快速急行のどちらが早いのか、わが急行はどう位置づけられているのか、三者の関係がよくは分からなかった。

   もちろん、調べれば済むことで、結果は快速急行が一番早くて、次いで快速、最後が急行だった。僕は「快速」も「急行」も同じ程度の言葉と思っていたが、鉄道の世界では、快速は急行より「上」のようなのだ。

   ところが、である。池袋駅は東武東上線とともに西武鉄道の池袋線のターミナルにもなっている。その西武池袋線でも、三者の中では快速急行が一番早いのだが、次が急行で、最後が快速だった。つまり、快速と急行の地位が東武東上線とは逆転しているのである。

   その後、関東では京成電鉄、京急電鉄、関西では近鉄、阪急電鉄あたりのターミナルで電車の種別を見て回った。どう名付けようと各社の勝手なのだが、さまざまな種別を眺めているうちに、少し頭が痛くなってきた。

   たとえば、「通勤特急」「通勤急行」「通勤快速」というのは、通勤時に走らせる電車なのだろうが、本来の特急、急行や快速に比べてどうなのか――。電鉄会社ごとにいろいろあって、イマイチよく分からないのだ。

きちんと順序立てれば、分かりやすい

   冒頭に書いた東武東上線で以前、通勤急行が走っていたことがあった。僕がまだ現役の勤め人だったころだ。出勤時は気がせいているから、早く池袋に着いてくれる電車なのかと思ったら、停車駅が多くて逆に時間がかかった。なんでわざわざ通勤急行なんて名付けたのか、とがっかりさせられた。

   「区間急行」「区間準急」というのもよくあるが、これらも意味がはっきりしない。ある区間は急行、あるいは準急だが、他の区間は各駅に停車する普通列車になるという意味だろうか。

   かつて「裸の大将」と呼ばれ、人々に愛された山下清(1922~71年)という画家がいた。彼は生前、「兵隊の位で言うと......」が口癖で、ものごとを大将、中将といった兵隊の位で評価していた。

   電車の種別もこれを見習ってはどうだろうか。たとえば、早い順に大将、中将、少将、大佐...... 中尉、少尉と名付けていく。きわめて分かりやすくて、快速と急行とではどちらが早いのか、なぞと悩まなくてもいい。

   ――と言うのは冗談なのだが、電車の種別はもっと乗客に分かりやすいようにしてほしいのである。(岩城元)

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岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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