置いてけぼりの年金問題 消費税の使い道「子育て支援」は耳触りがいいけれど...(鷲尾香一)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

「働けば賃金を得られる」は、まやかしだ!

   内閣府の報告書の骨子案では、年金受給年齢になっても、まだまだ元気なのだから、働くことで賃金を得て、年金の受給を遅らせればよい、というロジックになっている。確かに一理ある。労働人口が減少に入った現在、高齢者も重要な労働力であることは間違いないだろう。

   しかし、そんなお題目は、もう聞き飽きた。問題は、現行の再雇用や定年延長といった制度では、賃金が大幅にカットされることにある。「仕事の内容が定年前とほとんど同じなのに、給与は現役時代の3分の1。これでは生活できない」(67歳、製造業)という声がほとんど。つまり、「年金受給と並行して仕事をしているから、何とか生活水準を下げずに済んでいる」というのが実態なのだ。

   ちなみに、厚労省が2017年10月4日に公表した「生活保護の被保護者調査」によると、全国で生活保護を受けている世帯は今年7月時点で、164万1087世帯。そのうち、高齢者世帯は86万3050世帯と半数以上を占めた。さらに、このうちの約9割が単身世帯なのだ。

   こうした現実を踏まえたうえで、年金受給の開始時期を議論しなければ、実現不可能な、あるいは貧困高齢者を増加させるだけの制度改正に陥るだろう。

   本当に年金受給年齢を先延ばしし、高齢者を労働力としたいのであれば、衆院選で「高齢者の雇用企業に現役並みの給与を保障させる」くらい思い切った政策を掲げる必要があるのではないか。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
姉妹サイト