改革の「エンジン」可能性があるとすれば「希望の党」か
シンクタンクの大和総研が、政府が導入を目指している「残業時間の罰則付き上限規制」について、こんな試算をまとめた。残業時間の上限が年720時間、月平均60時間に規制されると、残業代は最大で年8兆5000億円相当の減少が見込まれるというのだ。
残業時間の上限規制が実現すれば、原則として「年360時間、月45時間」の上限が残業時間に設けられる。繁忙期などには特例が設けられるが、月平均60時間の「年720時間」に制限される見通しだ。
つまり、このまま自主的な上限を維持しようが、法規制で上限を設けようが、時間ではなく成果に対して支払う仕組みを議論しない限りは「給料が減る」ということだ。
では、仮に「働き方改革」関連法案がこのままお蔵入りした場合、何が起こるだろうか――。
1~2年は現在の残業自粛状態が続くだろう。その過程で一定の業務効率化も進むに違いない。だが、抜本的に生産性が向上するわけでもなく、なにより労働者側に「もっと長く働いて、手取りを増やしたい」というインセンティブが残るから、短期間で巻き戻しは進むはずだ。
改革実現の可能性があるとすれば、左派を切り捨てることで柔軟な政策議論の可能となるであろう「希望の党」だろう。彼らが与党側と議論を継続すれば、2018年早々にも、より踏み込んだ形で新たな働き方改革法案が出現してくるかもしれない。
その際は、恐らく左派系の議員が「残業代ゼロ法案だ!」だの「過労死促進法案だ!」だの、ごちゃごちゃ言ってくるだろうが、彼らは希望の党に入れてもらえず絶望しているだけの人たちなのでスルーしておいて問題ない。(城繁幸)