この1週間、仕事で通勤ラッシュを体験している。疲れた身体で満員電車に押し込まれるのは、苦痛でしかない。
そういえば会社員だった25歳のときも、通勤がイヤで仕方なかった。自分で選んだわけでもない見知らぬ土地の社員寮から15分も歩き、ヒールのかかとをすり減らして、ようやっと駅についたと思ったら、満員電車に背中から押し込まれる。会社の最寄り駅についたら、雨が降ろうが槍が降ろうが、歩みを止めてはいけない。
平均通勤時間 東京は1時間45分、大阪は1時間27分
25歳の私は、この「痛勤」に時給が2000円も出れば、まだ耐えられるかな~と、ろくでもないことを考えていた。正直に言うと、今でも考えは変わっていない。企業は、社員が「痛勤」に耐える時間をもっときちんと評価すべきなのだ!
NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している「国民生活時間調査」によると、東京エリアで働く人の平均通勤時間は、じつに「1時間45分」、大阪では「1時間27分」にもなる。東京圏で仕事をしている人は、通勤に時間を取られるからか、睡眠時間もいちばん短い。
「痛勤」は、ビジネスマンにとって大きな負担だ。私の知人も、「満員電車ではひたすらスマホに集中し、他人との接触を不快に思わぬよう皮膚感覚を『無』にする」と言っていた。
朝はボンヤリしたやや暗い頭で、目的地へと(一応は主体性をもって)護送される無常。帰宅時はそれに輪をかけてヒドい。
まず、1日の労働で疲れきった脳内は、ほとんど生産的な思考ができなくなっている。
「ああ、今日も○○先輩を怒らせたなあ」とか、「お腹すいた......」「座れるかな、いや無理だろうな」など、たいして深刻でもないが建設的でもない、まったくぼんやりした頭で、電車に足を踏み入れる。
ああ、やっぱり座れないな~と「ドア横」をキープしようとするも、リュックを抱えた中年男性に押しやられ、新たなポジションをうつろな目で探す。
あとからあとから、帰宅ラッシュの会社員や学生たちが、疲れた顔で乗り込んでくる。
「順に奥へとお詰め下さい」――。いつもの事務的なアナウンスにうながされ、人々は最低限の配慮をもって肌を寄せ合う。ああ、気持ちが悪い。ノートパソコンや各種資料が詰め込まれてパンパンのビジネスバッグを持った男性と肩がぶつかる。
互いに「あんたは不快だ」と言いたくなるが、公共空間のルールが喧騒とともに怒りをおさえつける。そもそも、この電車内のどこにも「あなたが歓迎される要素」はないのである。