目新しさだけでは、求心力は保てない
業歴50年を超える中堅食品メーカーのM社は、至って保守的で新しいことに消極的で事なかれ主義の二代目社長のもとでジリ貧状態が長く続き、創業者がつくった財産を食いつぶしていくような状況にありました。
社員にもストレスが溜まり、自然の流れとして、後継と目され常務を勤めていた三代目への期待感は徐々に高まっていきました。
そんな折に、二代目が急逝します。社内は一気に明るさを取り戻し、三代目を中心とした結束の下、第二創業的な盛り上がりに湧きました。ところが、それも長くは続かず、3年ほどで三代目が弱音を吐いているという話を耳にしました。
私が直接三代目から聞いた話ではないのですが、周囲には「社長交代の目新しさは、時間の経過とともに色あせてしまった。素晴らしい新規事業でも思いついて皆の関心を引けないものか」とボヤいていたのだと。
M社の状況は、「新党ブームの沈静化 → 終焉」の流れによく似ていると思います。三代目が考える社長交代というエポックに代わる「目新しいこと」探しは、根本的な解決策にはならないでしょう。
目新しさで求心力をつないでいこうとするのなら、永久に次なる新規事業展開を探し続けていかなくてはなりませんから。やはり求心力を長く保つポイントは、政界のリーダーシップと同じくビジョンの有無だと思うのです。
リーダーが具体的でかつ実現可能と思われる中期的なめざす姿を明示する、それがビジョンの提示です。ビジョンを求心力として組織を前に進めていく、それが一時のブームをブームで終わらせないマネジメントのセオリーでもあるのです。
今回の総選挙において話題の新党、希望の党がどのように国民の関心を引きつけ、果たしてブームは起きるのか。またその持続が可能であるのか否か。マネジメントセオリーの観点からも注目しています。(大関暁夫)