商社マンと音楽の「二重生活」という道もある
とはいえ、そうは言うものの、「言うは易し行うは難し」ですよね。当面、商社マンと二重生活をしたらどうでしょうか。
あなたがどんな音楽を目指しておられるのかわかりませんが、仕事をしながら音楽をつくるのは、多くのサラリーマンから共感を得られるのではないでしょうか。
二重生活なんかできないって? そうですか......。
ただ、フリーランスで食べていくのは、なかなか大変です。しかし、やれないと思ったら、いつまでも後悔が続きます。後悔しないため、思い切って辞めますか? 何とかなるものですよ(ならない場合がないとは断言できませんが)。
「徳は弧ならず、必ず隣有り」という、孔子の言葉あります。信念をもっていれば、正しいことをしていれば、必ず助ける人がいると解釈しています。
あなたも同じでしょう。一緒に音楽に親しんだ仲間に声をかけて、一緒に荒海に飛び出してみるのもいいでしょうね。
でもその時、これは私の場合、結果論ではありますが、何が「売り」になるかです。あなたの特徴ですね。
私の場合、銀行で26年勤務して、それなりの立場を経験。多くの問題に遭遇し、それを命懸けて解決したことを、多くの人が知ってくださっていたことなどがありました。作家以外の面でも評価してくださる人が多く、講演やテレビコメンティターなどの仕事の依頼も受けるようになりました。
あくまで本業は作家ですが、こうした作家に付随する仕事も、大いに私の助けになっています。こうした仕事も私は喜んで引き受け、一生懸命にやっています。
これは皆、私が井伏先生の言葉「小説はいつでも書ける」のとおり、じっくりと銀行勤務をしたおかげです。
今は、小説を書くのは苦しいこともありますが、楽しいです。こんなに小説を書くのが好きだったのかと自分でも驚いています。
あなたも音楽が好きなら、きっと運命がその道に導いてくれますよ。焦らず、今の仕事を「十分」にやり切ることを考えられたらどうでしょうか?
思いは叶いますから。(江上剛)