ビットコインへの厳しい目
では、たとえば株式取引と仮想通貨取引では、税務処理にどのような違いがあるのか。上場株式の場合、売却益は申告分離課税となり税率は一律約20%になる。さらに、上場株式の売買では、損失が発生した場合には、将来3年間に渡って損失を繰り越し、将来発生した利益から控除することが認められている。
一方、仮想通貨の場合は利益額が20万円を下回る場合には、確定申告は不要だが、他の雑所得と合算して20万円を上回れば、確定申告の必要がある。
もちろん、年間でも何度も取引を行えば、利益が出る場合も損失が出る場合もある。その損益通算をすることは可能だ。しかし、株式取引のように損失が発生した場合に将来3年間に渡って損失を繰り越すことはできない。
雑所得では、たとえば原稿料収入が15万円あり、仮想通貨取引の利益と損失の通算が10万円の利益であれば、雑所得として25万円の収入を確定申告する必要がある。
同じ雑所得でも、先物取引やFXの取引所取引の場合は、所得税15.315%、住民税5%の申告分離課税だが、今のところ仮想通貨取引は総合課税となるため、累進課税が適用されることになる。
このため、他の所得(たとえば給与所得など)と合算して適用税率が決まるため、他の所得との合算が高額になれば、最高税率の45%が適用される可能性もあるわけだ。
さらに半面、雑所得の合計額が20万円未満の場合には確定申告は不要だが、住宅ローン控除や医療費控除などで確定申告を行う場合には、雑所得の合計が20万円以下であっても確定申告書への記載が必要になる。
さて、そうした中で国税当局の方針が明らかになった仮想通貨取引の税務処理だが、実際の申告に関する周知度は非常に低く、また申告するための準備は仮想通貨取扱業者(取引所)、投資家とも進んでいないのが現状だ。
場合によっては、そんな仮想通貨取扱業者(取引所)や投資家への、大口脱税の摘発がありえるかもしれない?
ちなみに、ビットコインを取り扱う中国の取引所「BTC China」は、2017年9月30日をもって中国国内でのビットコインと人民元との交換を終了する。中国政府が以前から仮想通貨に対して規制を強化する姿勢を示しており、4日に出した通達では、ビットコインが違法な資金調達や詐欺などの犯罪に使われる可能性を指摘していた。
ビットコインへ厳しい目が向けられている。(鷲尾香一)